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【就活のリアル転載】採用で教養試験が廃れたワケ 大手は大卒ばかり、不要に 海老原嗣生(2017/9/25付 日本経済新聞 夕刊)(2017/10/02)


 新卒採用の入社試験というと、算数と国語に代表される基礎能力検査と、性格面の適性検査ばかりになる。

 たとえば、公務員の登用試験のように、もっと本格的に学問を題材とした試験は課されないのだろうか? こんな疑問を持つ人もいるのではないか。

 実は、日本の大手企業もかつては、一般教養や語学、経済や法律などの専門知識を入社試験で課していた。

 これは、その方面に詳しい就活ジャーナリストの石渡嶺司氏から聞いたのだが、1980年代前半の人気漫画「なぜか笑介」(小学館、聖日出夫著)の中に、就活生のこんなセリフがあるそうだ。

 「俺、英語はそこそこだったけど、一般教養がまるでだめだった」

 石渡氏によると、1980年代の初めまでは、大学入試の過去問を集めた「赤本」のように、企業別の入社試験を集めた対策本が出ていたそうだ。

 なぜ、こういう形の入社試験が潰(つい)えたのか。

 今から15年ほど前、私が人事経営誌の編集長をしていた時に、大手企業の人事部長を集めて座談会を開いたことがあった。

 そのときに集まった部長たちは、試験があった時分の入社組だった。そこで、入社試験が廃れた背景を聞いたことがある。

 彼らが話した理由は、至って明解だった。

 まず、こんな形で入社試験をしても、実際には、その高得点者が入社後に、はかばかしい業績を上げることはなかったという。それが最大の要因だった。

 そしてもう一つ見逃せない理由があった。

 それは、「当時は大手企業でも、高卒ホワイトカラー社員がまだ多数いた」せいだったという。

 同じ職場に高卒者と大卒者が混在する中で、明らかに昇進コースに乗るのは大卒者に限られる。その差異を説明するには、求められる素養が異なる、という事由が必要となる。そのために、入社試験で「教養」や「専門性」を見ていたというのだ。

 確かに当時は、大卒であればだれでも課長で、高卒だと課長補佐か係長どまり、という風潮だった。

 現在は大学進学率が高まり、大手企業のホワイトカラー高卒採用が廃れて久しい。新入社員の全員が大卒という同じ土俵の中では、業績により「課長になれる人」と「そうでない人」が決まるのが普通になった。

 だから、難しい教養試験も不要となったということだ。

 

(雇用ジャーナリスト)


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