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【就活のリアル転載】理系研究職は狭き門 まずは専門の合致、次に人柄 上田晶美(2018/5/29付 日本経済新聞 夕刊)(2018/06/05)


 「受かりました!」。大手日用品メーカーの研究職の内々定をもらったと、理系の大学院の女子学生から電話が来た。

 研究職というのは採用人数が極端に少なく、難関の一つである。何百倍という倍率を勝ち抜いた内定はお見事といえる。私は今年も何人か理系の学生の就活を支援しているが、売り手市場でも厳しい状況だ。理系の方が文系よりも就職は楽だといわれているが、研究職となるとそう簡単ではない。

 まずその会社が求める専門の研究をしているかどうかが問われる。大学での研究が会社のニーズにピタッとあてはまる人がいい。これは理系と文系との大きな違いだ。文系ならば文学部でも法学部でも、就職先に大して差はない場合が多いが、理系は専門外のところを受けると苦労することになる。

 以前、東京大学の理系大学院生の就活を支援したことがあるが、全く別の分野を志望したら苦戦を強いられた。いくら東大でも、畑違いの研究分野への就職は無理ではないが難しい。東大に受かるポテンシャルだけでは採用されないということだ。

 冒頭の彼女は、専門の研究が合う会社であり、3次面接まで進んだ。社内の研究職10人に対し、一人で自分の研究についてプレゼンテーションもした。10対1という面接は文系ではあまり聞かない。研究職はそこまで吟味するということだ。

 もちろん多くの質問が出たが、和やかな雰囲気で話しやすかったという。自分の専門なので落ち着いて答えられた。科学者同士のやりとりという感じなのか。結果「普段どおりに話している感じがいいですね。人柄が出ていた」と言われたそうだ。

 そう聞くと、研究内容だけでなく、やはり最終的には人柄が決め手になるのかと文系の私は少し安心する。研究といえど一人でやるものではなく、チームで行うもの。専門性だけでなく、研究者として社内で続けていけるかというところで、人柄も大切になるということだろう。

 先日、ある電機メーカーの元研究開発職だった人に採用ポイントを聞く機会があった。向いている人かどうかという適性は、研究者同士は少し話をすればわかるらしい。

 必要な能力は2つあり、一つは論理性。これはどんな仕事にも大切な能力だが、研究職では特に重視される。二つ目はズームレンズのような視点だという。対象を細かく観察するだけでなく、時には遠くから俯瞰(ふかん)して見るという、自在で柔軟な視点だ。見分けるのは難しそうだ。人事はほとんど文系なので、研究者の人選は研究者に任せる会社が多いのもうなずける。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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