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【就活のリアル転載】大学費用無償の欧州 幼年期から選抜、進学率低く 海老原嗣生(2018/6/5付 日本経済新聞 夕刊)(2018/06/12)


 
 前回のこのコラムでは「就活のあり方」につながる大学無償化について、日本では議論がまとまらない現状を書いた。今回は一足先に実現した欧州を例に、大学無償化を進める前にしておくべきことを考えてみた。

 欧州では大学の学費を無償化もしくは低額にしている国が多い。無償なら大学に進む人が極めて多くなりそうだが、現実はどうか。

 大学進学率は日本は経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で真ん中よりやや下に位置する。とはいえ、アイルランド、ハンガリー、ドイツ、オーストリア、スペインと日本の差は2%以内であり、イタリア、スイス、フランス、トルコ、ギリシャ、ベルギーなどは日本より相当低い。

 加えていうなら日本以外の多くの国は、大学進学率といっても単に大学入学者数を高校卒業者数で割っただけのものだ。その中には、再入学や留学生なども多数含まれる。こうしたかさ上げがあるのに、日本並みかそれ以下なのだから、欧州の純粋な進学率は決して高いとはいえないだろう。

 なぜ、大学進学者が増えないのか?

 理由は簡単だ。無償の公共施設だからこそ、「行くべき人を絞る」と考えられているのだ。大学には、厳しく審査されて資格を与えられた人しか入学ができない。フランスでいえばバカロレア、ドイツでいえばアビトゥーアなどの高校修了認定がそれだ。が、さらにその前にいくつもの関門があり、大学に行ける人の数が絞られる。

 仏独とも小学校中盤以降に教師・親・本人の三者面談があり、将来のコースが宣示される。そこから先は、フランスを例に見ていこう。次の関門は14歳。ここでは高校(リセ)の選別が行われ、普通リセと職業リセにわかれる。普通校に入れた人でも、16歳時点で「普通科」か「技能科」に分けられる。さらに、18歳で、今度は上位約1割が大学よりも難しいグランゼコールに進むべき人と認定され、選抜試験に備えた予備級へと進む。こんな形で大学や高等教育機関に行くべき人が、他律的に決められていくのだ。

 欧州事情に詳しい人は、各国の大学教育課程を共通化する政策「ボローニャプロセス(教育改編)」の実施後は「事情が変わった」というかもしれない。確かにドイツは少し変わった。ただフランスは変わらず日本以下の進学率だ。

 ちなみに、日本人が聞いたら驚くような数字を一つ上げておく。義務教育期間中に落第する人の割合だ。独仏をはじめとした多くの欧州諸国では約2割なのだ。幼年期から確実に「いける人」選抜は始まっている。

(雇用ジャーナリスト)


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