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【就活のリアル転載】単純作業も人手が必要 自動化の難しい仕事残る 海老原嗣生(2018/8/28付 日本経済新聞 夕刊)(2018/09/04)


 前回からこのコラムでは、人工知能(AI)時代を見据えてどんな職業教育をすればいいかをテーマにしている。よく言われるのが、AIが浸透し始めると、単純作業は真っ先に機械化されてなくなってしまうというものだ。実際、そうした仕事を多く抱える企業に取材してみると、自動化対応の担当者はオフレコでは「そんなことができるわけない」という。

 ところが公式見解となると「可能性が見えてきた」という趣旨の発言となる。こんな本音と齟齬(そご)を来した場面に、いたるところで出くわした。会社としてはAI化を標榜し、企業イメージをあげて、あわよくば株価も就職ランキングも上げようと考えている。だから公式には「AI化など無理」とは言えない状況なのだ。

 製造業、流通サービス業、建設業……。こうしたAIで真っ先になくなりそうとされる業務が、まだまだなくならないという理由はほぼ一緒だ。それは2つのファクターで説明できる。

 1つ目は、こうした作業には、必ず物理的作業が付随する。AIは知的作業は得意だが、物理的行為をすることができない。そこでそれらには必ず、手足代わりとなるメカトロニクスが必要となる。

 2つ目は、人がやる仕事は単純に見えるが、大体7~10個くらいの、趣の異なる作業の寄せ集めとなっている。例えば、ケーキ屋さんのレジ打ちの仕事を考えてみよう。この仕事は、レジを打つ、ケーキを取り出す、ケーキを箱に入れる、包装する、補充する、値札をつける、ショーケースを磨く、などの作業から成り立つ。

 これらの仕事を機械化・自動化するということは、すなわち、7~10もの異質な作業を全て自動化することである。それには当然、7~10のメカトロニクスが必要となる。それぞれの開発には時間とお金がかかるし、しかも、スペース効率や見栄えも悪くなる。考えてみるとよい。ケーキ屋さんに、いくつもの自動化用の機械が並んでいる。そんなお店には誰も行きたくなくなるだろう。

 たった一人、人間を雇えばこうした設備投資はすべて不要となり、そのうえ、店の見栄えも極めて良い。だとしたら、企業は、機械化よりも人手を選ぶに決まっている。

 数社取材した中で、製造系の企業の自動化担当者はこんな話をしていた。

 「製造業はコストダウンのために極限まで自動化しています。そうして残った部分にのみ人手を使っている」。そんな自動化の難しい作業群がそうそう簡単に機械代替はできないのだ。人一人でそれらが解決できる。人間は捨てたもんじゃない。

(雇用ジャーナリスト)


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