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【社会に出る学生のための人権入門】(第3回)人権とは? 学力や学歴を通して差別が再生産(2017/11/09)


 連載第2回で紹介したアメリカ合衆国の教育事情は日本でも進行している。だからこそ各種選挙時に教育格差の是正が公約として上げられるのである。今年10月22日の衆議院選挙も同じような政策が政党に掲げられた。

 フリーターと呼ばれる人々の平均年収は少しデータは古いが2005年時点で167万円である。これらのフリーターの最終学歴は、中卒・高卒が約70%(男性71.3%、女性65.0%)で、大卒が約10%(男性12.5%、女性8.0%)となっており、学歴が雇用条件と密接に関係していることが分かる。この傾向は10年以上経た今日でも大きな変化はない。

 これらの雇用条件は経済状態に結びつき、経済は生活につながり、生活はその人たちの文化的背景や学力とも結びついている。さらに学力は学歴につながり、負の循環が連綿と続いているのである。学力や学歴、文化を通して差別が再生産される構図が強化されている。

 OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で統計数字が明らかになっている30カ国で、GDPに占める教育費の割合は、日本は29位であった。日本は教育にお金をかけなければ発展できない国である。石油などの資源が豊富にあるわけでもなく、国土が広いわけでもない。にもかかわらず教育に対する公的支出は十分なものではない。公教育に対する予算が削られたとき、最も影響を受けるのは貧困層の子ども達である。教育にお金をかけることができない家庭は、質の高い教育を受けさせることができず、先に紹介した負の循環が際限なく続くことになる。

 親から子への世代間移転ができる資本には、経済資本、文化資本、社会関係資本、感情資本などがある。経済資本は一定の額を超えると相続税等がかかってくる。その他の資本の世代間移転は、子ども自身の努力とも関わっているため見えにくく、もちろん相続税もかからない。これらの世代間移転で最も重要な役割を果たすのが教育である。

 経済資本も教育と密接に関わっている。親から相続する動産・不動産は直接的な財産である。それら以外にも事実上経済資本を子どもは受け継ぐことになる。それは子の時代に親から教育に関わって経済支援を受けることによって、より高学歴で専門性の高い知識・技能を身につけることができる相続であるともいえる。それは自身の所得を増やし、財産形成に大きな好影響を与え、経済的な財産相続と同様の効果をもたらすことになる。

北口 末広(近畿大学人権問題研究所 主任教授)


     

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