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【社会に出る学生のための人権入門】(第11回)人権とは? 各種ハラスメントを理解しよう (2018/07/12)


 2012年3月15日、厚生労働省から「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」がまとめた職場におけるパワーハラスメントの定義が公表された。

 ハラスメント防止は、これから企業に就職しようとする学生だけではなく、企業経営者にとっても最重要課題になっており、働き方改革の視点でも焦眉の課題になっている。

 企業等は、多様な人々を「雇用」し、雇用した多様な人々の「労働」によって製品・サービス等を生み出し、その製品・サービスを多様な人々や法人に「提供」する。それぞれの分野に企業の責任として、雇用や採用時の採用責任、快適な職場環境などを維持する労働責任、そして製品・サービス等を提供するときの提供責任が存在する。

 採用責任では、職業安定法遵守や就職差別の防止などが求められ、労働責任では、労働基準法等の遵守や業務の中での差別防止、セクハラ、パワハラ等の防止などが求められる。提供責任では、安全な製品・サービス等を提供するために金融商品や製造物、その他の販売に関わる多数の法律等を遵守するといったことが求められている。

 とりわけ今日においては、多様な人々が快適に働ける条件を整備しつつ、多様な人々の違いをチャンスにする発想がなければ、良い企業にはなれないといった発想をもつ企業経営者も増加している。いずれ本連載でも紹介していきたいと考えている経団連の新「企業行動憲章」(2017年11月8日改定)では10の原則を上げ、その第4に「人権の尊重」を謳い、「すべての人々の人権を尊重する経営を行う。」とし、第6に「働き方の改革、職場環境の充実」を明記し、「従業員の能力を高め、多様性、人格、個性を尊重する働き方を実現する。また、健康と安全に配慮した働きやすい職場環境を整備する。」と掲げている。

 パワハラ防止は、以下の4つの視点からも重要だといえる。第一に経営戦略上の視点である。多様な人々が快適に働ける職場を創造することは、人材の活性化という視点で欠かすことのできない課題になっている。近年、企業内でうつや適応障害等のメンタル不調が増加している背景にパワハラやセクハラの存在が上げられている。パワハラが横行する職場で快適な職場環境はあり得ない。メンタル不調の人々が増加し、職場環境が悪化する職場で働く人々が、快適な気持ちで仕事を遂行できないことは言うまでもない。他にもコンプライアンスやCSR、リスクマネジメントの視点を含めた4つの視点で重視されている。

 以上の視点をふまえ次回からはハラスメントに焦点をあてて考えていきたい。

北口 末広(近畿大学人権問題研究所 主任教授)


     

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