知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】インターンで選ぶ就職先 複数比較し視野広げよう 上田晶美(2022/6/21付 日本経済新聞 夕刊)(2022/06/28)


 「3年生の時に長期インターンに行ったベンチャー企業から内々定をもらいました。そこに就職しようと思っていますが、親に反対されています」とある大学4年生から5月に相談を受けた。親御さんからの相談は毎年多いが、このように内定先のことで意見が合わないという相談を、お子さん側から受けるのは珍しいケースである。

 どのような就活をしたのかと聞いてみたところ、3年の夏にベンチャー企業で長期インターンをして以来、その会社にアルバイトに行っており、他に就活はしていないそうだ。そこは創業3年の「SNS広告の会社」で、アルバイトを含めて10人ほどの規模。社員は全員が20代で、気が合うからそのまま働きたいという。

 インターンシップの仕事の内容は「テレアポ」だそうだ。「テレホンアポインター」はご存じのとおり、電話番号リストに沿って片っ端から電話をかけて営業していく仕事。労多くして成果は限られる仕事の筆頭に挙がりそうなものである。

 つい先日も相談を受けた転職希望の20代男性の悩みは、当初の第1志望の会社に入ったけれど、テレアポ中心の仕事が2年目に入ってそろそろ限界にきているというものだった。

 リストに沿って電話をしても3割程度は「この電話は使われておりません」。あと3割は留守で電話がつながらない。その後、つながってもけんもほろろに切られる。話ができるのは1割にも満たないそうだ。精神的に参ってしまっていた。

 同じようになるとは言わないが、10人以下の20代だけのベンチャー企業でテレアポの仕事をすると言われると、親御さんでなくても心配になってくる。もちろん就職は自分のことなので、最終的に決めるのは親ではなく学生本人なのだが、もう少し視野を広げてみる必要があるだろう。

 新卒というのは条件の良い会社に入れるプラチナカードでもある。できれば同業他社も受けてみて比較してはどうかと勧めたが、そのベンチャーの人たちに悪いと思っているようで、就活に乗り気になれないようだった。

 逆にそんなに信頼している間柄ならば、大事な人生の決断なので、他社も見てから決めたいと言えばわかってくれるはずではないだろうか。就活で何社か受け、比較検討した上でそのベンチャー企業を選ぶのなら、本人はもちろんのこと、周囲も納得できるはずだ。

 今をときめく米国のGAFAなども始めはベンチャー企業だったわけで、大成功できる可能性はもちろんある。だが、インターンシップは本来企業研究をする場であり、他社と比較することも必要なはず。インターンシップには複数行ってほしいし、インターンだけで就活をやめてしまうのは違う気がする。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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