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【社会に出る学生のための人権入門】(第13回)人権とは? 各種ハラスメントを理解しよう ~パワハラの定義・基準を正確に理解することの重要性~(2018/09/12)


 職場のパワーハラスメントとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と厚労省は定義している。「優位性」とは、職場における役割の上下関係のことではなく、当人の作業環境における立場や能力のことを指しており、部下が上司に対して客観的に何らかの優れた能力があり、これを故意に利用したいやがらせの場合であれば、たとえ部下であっても上司に対するパワハラ行為と認定される。

 例えば新しく赴任してきた上司に対して、地元事情やIT関係等に詳しくない上司を部下が単独又は複数で嫌がらせをしたり、阻害するのは明らかにパワハラになる。もちろん同僚が同僚に対して行ういじめも同じである。

 また「同じ職場で働く者」には、正規職員だけではなく、アルバイトやパート等その職場で働くすべての労働者を含む。近年では正規職員から派遣社員や非正規職員へのパワハラやセクハラが増加しているといわれている。例え一時間のパートであったとしても「同じ職場で働く者」であることに変わりはない。

 「精神的・身体的苦痛を与えること」とは、継続的・計画的に人格や人権を侵害する不当な言動を行い、心身に損傷を与えることである。ひどい言葉や身体的苦痛の場合は、継続的・計画的でなくてもパワハラに当たることは当然である。しかし、業務上必要な注意・指摘や人格や人権を侵害する不当な言動をともなわない適切で厳しい指導はパワハラではない。パワハラの定義を正確に知ることは、自身の受けている注意や厳しく的確な指導がパワハラと誤解しないためにも大切なことなのである。

 具体的な行為の分類については、①身体的な攻撃(暴行・傷害)、②精神的な攻撃(脅迫・暴言等)、③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)、④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)、⑤過小な要求(業務上の合理性がなく、能力や経験からかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)、⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)を上げている。
 具体的な判断基準については次回に解説したい。

北口 末広(近畿大学人権問題研究所 主任教授)


     

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