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【社会に出る学生のための人権入門】(第12回)人権とは? 各種ハラスメントを理解しよう ~企業にも大きな損失をもたらすハラスメント~(2018/08/10)


 前回に続いて各種ハラスメントを防止することの重要性ついて詳述していきたい。少々古いデータであるが、2005年に中央労働災害防止協会が一部上場企業の人事担当者を対象に行った「パワー・ハラスメントの実態に関する調査」報告では、「パワー・ハラスメントが企業にもたらす損失(複数回答)」といった質問に、
 ①社員の心の健康を害する(82.8%)
 ②職場の風土を悪くする(79.9%)
 ③本人のみならず、まわりの士気が低下する(69.9%)
 ④職場の生産性を低下させる(66.5%)
 ⑤十分に能力発揮ができない(59.3%)
 ⑥優秀な人材が流出してしまう(48.3%)
 ⑦企業イメージを悪くする(37.3%)
 ⑧訴訟など金銭的負担が生じる(27.3%)
 ⑨不正行為などを放置する企業体質をつくる(25.8%)
と回答しており、企業に大きな損失をもたらすことが認識されている。

 職場の各種ハラスメントは、労働者の尊厳や人格を侵害する許されない行為であるだけではなく、周囲の人々、加害者、企業にとっても損失が大きいといえる。まさに企業にとっての最重要テーマである働く人々の能力を最大限引き出し、企業イメージを上げるためには、ハラスメント防止は最低限の条件である。そうした視点から経営戦略上の重要テーマだと認識している経営者は確実に増加している。

 企業不祥事には、財務・安全・環境・情報だけでなく、労働や人権の分野も多数存在する。各種ハラスメントは間違いなく労働・人権分野の不祥事でありコンプライアンス違反である。ハラスメントが横行する職場で労働面・人権面のコンプライアンスが守られていると考える人はいない。それはハラスメント行為自体が労働面・人権面でのコンプライアンス違反という面だけではなく、上記の調査報告からもいえるように「不正行為などを放置する企業体質をつくる」という面からもコンプライアンス上の重要テーマだと認識するべきなのである。

 CSRの視点でもハラスメント防止は重要な課題である。企業の社会的責任は、前回指摘したように雇用時や製品・サービスを提供するときの責任だけではなく、労働者が労働環境が守られた状態で働くことができる環境を創造する責任が存在する。この労働責任は企業の社会的責任であるCSR上、重要な課題の一つなのである。

 以上の三つの視点からハラスメント防止の重要性を理解した上で、近年増加傾向にあるパワーハラスメントの定義を次回に紹介していきたい。

北口 末広(近畿大学人権問題研究所 主任教授)


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