ここのところ、就活生の親御さんからの問い合わせが相次いでいる。「うちの子が内定がないんですが」というものだ。
新聞各紙で今年の売り手市場の様子が伝えられ、内定を持つ学生は8割という記事もあったものだから、内定のないお子さんを持つ親御さんが焦るのもわかる。
「8割内定」というのは、私の実感からは少し高めの数字だという気がする。複数の大学のキャリアセンターに聞いてみても、「昨年並みですが、8割はいかないですね」と言う。
この8割という数字は冷静に見た方がいい。誰に調査したもので、どの機関が発表しているのかということだ。
これは就職サイトを運営している企業が自社の就職サイトを通じて学生に行った調査であり、大学や国の発表ではない。
この調査対象には一つの傾向があるのではないかと考えられる。
回答しているのはサイトの「学生モニター」に登録している人で、無作為に選ばれた学生ではない。就活サイトを盛んに利用している可能性が高く、それは大手企業を受けている学生であり、しかも活動をしっかりやっている熱心な学生たちと考えられる。すなわち、就職意欲の高い学生が回答しているので、少し高めに出る調査なのである。
それならば納得する人も多いだろう。「うちの子は出遅れていたから」とか「上位校ではないから、中小企業を狙っていると言っていた」という具合である。
文部科学省と厚生労働省による大学などの卒業予定者の就職内定率の調査は年に4回で、10月、12月、2月、4月。10月の調査を見ても昨年は大学が71.2%(前年同期比4.7ポイント増)、短期大学は41.6%(同8.4ポイント増)だ。
大学等(大学、短期大学、高等専門学校)全体では69.6%(同4.9ポイント増)、専修学校(専門課程)を含めると68.0%(同5.0ポイント増)という具合だった。つまり空前の売り手市場とされた昨年でさえ、10月においても7割程度というものだ。
それに加え、今年は大手銀行3行で1000人規模の採用減の見込みという動きがある。団塊世代の大量退職の補充が終わったという理由だ。大手航空会社の客室乗務員の採用も、昨年より150人減るという。頼みの観光関連業界ですら、潮目が来ているような感じもする。
まだまだ採用活動は続いている。内定がない学生たちにはぜひ頑張ってほしい。
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/