大学を出て新卒で就職した若者は、3年で3割も辞めている。
この事実を聞いて「最近の若者は」と怒るなかれ。統計を取り出した1970年代から、多少の上下の動きはあれ、大卒はおおむね3年で3割も辞め続けた。今の若者の祖父の時代から変わらぬ傾向なのだ。
ちなみに高卒の方はもっと数字が高く、3年でおおよそ5割が辞める。中卒はなんと3年で7割辞める。このデータをもって、昔から教育界では「7・5・3(しちごさん)の法則」と呼んでいた。
「近頃の若者は……」という話の次に出てくるのが「日本型の就職システムはこんなによくない」という話だ。
仕事のこともろくすっぽ知らずに就職するから、こんなに定着率が低くなる、という内容だ。そこから職務のことをよく知るように「インターンシップを!」と先走りする人たちも出る。私はその話にも違和感を持つ。
なぜか? 理由は、簡単。インターンシップの盛んな欧米での若年離職率が日本よりはるかに高いからだ。
経済協力開発機構(OECD)のデータで比較すると、欧州諸国では20代前半の離職率が年率で3割近くにもなる。こちらは「3年」ではなく単年だ。これを見れば、欧米型の仕組みがそんなにすごいものだとはいえないだろう。
そして、もう一つ、注意せねばならないことがある。「新卒の時しか職業選択ができない」という常識は、実はまるで嘘だともわかる。そう、もう50年も昔から、入職3年でかなり多くの就職者が辞めていた。
彼らに転職のチャンスがなければ、そうした離職者はずっと失業者になっていたはずだ。それは、今の若者の親世代も祖父母世代も、である。そんなお父さんやおじいさんは多くはないだろう。
ということは3年で辞めた若者たちは、過去、きちんと再就職できていたのだ。
このあたりを経済学者の小池和男氏は「日本の熟練」という本できっちり実証データを示し、今よりもむしろ1970年代の方が若年転職率は若干高かったと書いている。同様の研究は、1950年代にも労働法学者の故・藤田若雄氏が行い「日本では若年時に1~2回転職するのが平均的」と示している。
とすると、ことさら日本型雇用システムが1回だけのチャンスの窮屈なものではないとわかるだろう。
ではなぜ、昔も今も若者は転職をするのか。その理由と対策をこれからしばらく書いていきたい。
(雇用ジャーナリスト)