ブラック大手企業と中小企業の高離職率は、根本からしてその構造が異なる。
ブラック大手は、半ば確信犯的に高離職率を黙認し、一方、中小の高離職率は、不可抗力で起きているからだ。その違いはこんなところから発する。
まずブラック大手は、CMなどで知名度も高く、企業規模が大きいということで、学生たちの応募も集まりやすい。なので高離職率になっても構わない。
ハードに働かせ、ついてこられない社員はさっさと辞めてもらう。そうすれば優秀層のみ残るし、常に経験が浅く給与が安い人が多くなり、人件費も抑制できる。こんな算段がある。
夏休み明けでもまだ大々的に新卒採用を行っている大手は、こうしたタイプの企業がまま含まれる。
離職率が高いから欠員が多く、なかなか採用充足できないことや、そこまで人気がないから、応募者確保に長期間必要なことなどがその理由だ。「大手ならどこでもいい」という考えでこうした時期にこんな企業をチョイスすることは避けたい。
一方、中小は応募者が少ない中で、ようやく採用できた金の卵であり、無為に辞めてもらっては困ると考える。ところが離職してしまう。その後の補充はままならないから途方に暮れる。
事情は全く異なるだろう。
こんな「背に腹は代えられない」状況なのになぜ、中小企業は若年離職率が高くなるのか。
「給与や待遇が大手に劣るからだ」「オフィスや設備機器など労働環境の問題もある」「各種制度が未充実で、ワークライフバランスなども整わない」。そんな声が聞こえてきそうだ。
いつもながら、また私のいわゆる常識批判が始まってしまう。こうした若年離職者が転職で入る次の会社は、そんなに条件の良い企業なのだろうか。それはないだろう。
賃金構造基本統計調査などを見れば、転職ではむしろ賃金などは下がるケースの方が多い。常識的に考えても、中小企業に働いていた人が、転職したら超大手に入れた、などという例は、圧倒的少数と言わざるを得ないだろう。
つまり、規模も給与も待遇も環境も、格段に改善されるはずもなく、似たようなプロフィルの企業に入ることになる。なのに、こんな転職を1~3回程度するうちに、大半の若者は一つの会社に落ち着くようになる。
そこに隠れている職選びの真実を、次回以降、語ることにしよう。
(雇用ジャーナリスト)