私の担当している大学の学生100人に「どんな会社で働きたいか」というアンケートを取ったところ、一番多かったのは「アットホームな会社」だった。
「仲がいい、雰囲気がいい」なども多く、気にしているのは社員の人柄や、温かさ、のんびりとした社風ということだ。売り上げを上げるために皆がガツガツ働く会社ではなく、競争のない、上司や同僚が優しく接してくれる会社とも書いていた。
次に多いのは「休日」に関すること。土日休みや、有給休暇がとれることなどを挙げており、残業がないことよりもそちらが先に来る。残業は少々あってもいいし、それに対して、対価としての残業代が支払われるのであれば、あまり文句はなく、しっかりとお休みできればそれでいいと考えているようだ。
その次に挙がったのが「福利厚生」。どこかで聞きかじってはいるものの、内容はよくわかっていないようだったので、改めて教えた。そもそも「福利厚生」とは、給料以外の支援・サービスであり、保険や年金など法で定められたものと、住宅手当など企業が独自に設け補助的に支給されるものがある。
条件で一番に挙がりそうなのは「給料」のはずなのに、先に「福利厚生」とくる。人を大事にするというイメージが強いのか。給料は「高くなくても暮らせるだけあればいい」という答えも複数あった。福利厚生が良ければ、当然、給料も高いだろうと推測はできるが。
ベスト3をまとめると(1)アットホーム(2)休日(3)福利厚生――という順番だった。学生たちは職場でも「大事にされたい。自分を守りたい」のだ。
先日、学生に大人気の大手メーカーの社長の講演を聴く機会があった。最後に「うちはアットホームな会社を目指します」と言っていた。大企業がアットホームというのは、実際は難しそうだが、採用面では学生にうまくアピールできるワードだ。
その会社だけでなく各企業の採用ページに「アットホームな会社」を掲げているところが増えた気がする。以前は「グローバル」や「未来の創造」といった会社が多かったのに。
本当にこれで大丈夫なのか? 学生はのんびり「アットホーム」に働きたいイメージを持って入社し、会社側も「アットホームを目指しています」と言って採用する。すぐに挫折しそうなことは目に見えていないか。
働き方改革法案が可決され、社会は労働時間を短く効率的に働く方向を目指している。大学の講師としては学生に、早く現実に気付かせなくては、と焦るばかりだ。アットホームな会社というのはイメージであり、比喩でしかないとしても。
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/