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【就活のリアル転載】日本の大学どう変えるか 学問とビジネスに課程分け 海老原嗣生(2018/7/31付 日本経済新聞 夕刊)(2018/08/07)


 このコラムで「大学無償化」をテーマに欧州と日本の違いなどを書いてきた。このテーマの最後として、日本の大学の在り方に触れたい。

 日本の大学、それも文系の場合、その多くは名前こそ異なれど、法律・経済・経営・文学部からなる。それは100年以上前、まだ日本に大学が10校もなかった時から変わらない。当時は、国家経営を担う人材養成機関として大学は存在した。しかし現在は、その数800近くにまで増え、多くは卒業後、普通の会社員となっていく。

 会社に入れば仕事は、総務・人事・経理・宣伝・マーケティング、営業などとなる。これらの仕事で法律や政治、マクロ経済や文学がそのまま生かせるはずはない。だから、大学と社会は乖離(かいり)していく。大学生が勉強しない一因もそこにあるだろう。これを変革するために、ドイツとフランスの、大学進学の資格審査を厳しくする一方で社会が求める人材をしっかり送り出す事例を、うまく接ぎ木した絵を示してみたい。

 日本で数年前に議論されたグローバル人材を育てるG型大学と地域密着のローカル人材を育てるL型大学は、大学を学校ごとにG型・L型と分けてしまう方法だ。それは非常に厳しいだろう。私は、大学自体は今のまま学部構成も変えずに、大学2年からA課程(アカデミズム)とB課程(ビジネス)に分けることを提唱したい。

A課程は今までのカリキュラムとほぼ同じで、そこには将来、研究・公務・教育・士業などを目指す人が行く。専門教育が実務にかなり結びつくだろう。

 一方、民間就職を考える人たちはB課程に進む。こちらはドイツの職業大学(専門大学)を範として、2年次には人事・総務・経理・営業・マーケティングなど実務を徹底的に教える。さらにB課程では3年次に上位1割程度を選抜してエリート教育をするようにする。

 この特別選抜組はフランスのグランゼコールの仕組みを持ち込む。企業連携講座が受講でき、人気企業からの学費・給与付き実習生などの特権が与えられるようにするものだ。こちらに入れなかった人は、ドイツの職業大学3年次と同じように2カ月×3職務の実習に出る。

 A課程へ進んだ人は専門知識が将来役に立つから、言われなくても勉学に励むだろう。一方、B課程の人たちは特別選抜組に入るという目標ができるので、今までよりも学習意欲がわく。3年次以降は実習なので、真剣に取り組むだろう。

 特別選抜クラスは、グランゼコールや米国MBA(経営学修士)のように寄付講座制とすれば、大学と企業は距離が縮まり、資金面でも楽になる。

(雇用ジャーナリスト)


     

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