知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】エントリーシートの「しかし」 指示を素直に受けない人? 上田晶美(2018/8/7付 日本経済新聞 夕刊)(2018/08/14)


 仕事柄、私は学生の書く文章を読む機会が多い。大学の講師をしているので、大量のリポートを読むし、期末試験の中にも200字くらいの文章を何題か書かせ、評価する。それに加え、就活指導のエントリーシートも添削する。

 学生の文章で気になるのが、最近の傾向として、やたらと「しかし」という接続詞を使うことだ。それも本当に「しかし」という逆接で使用するのならば1カ所くらいはいいと思うが、逆接にしなくてよさそうなところまで「しかし」を使う。

 並列の「また」の方がふさわしいところや、順接の「したがって」でつなぐべきところでも、使っているのは「しかし」だ。接続詞は「しかし」しか知らないということだろうか。こうなると国語の「リテラシー」が下がってきたことを嘆かずにはいられない。

 リポートは別として、就活のエントリーシートではそもそも逆接の接続詞を使うのはよくない。なぜなら、逆接が目立つと、どうも全体的に反抗的な印象の文章になるからだ。

 私は「エントリーシートに笑顔はいらない」と指導しているが、エントリーシートは本人に会う前に選考されるものだからだ。多くのエントリーシートには写真がないし、あっても部活動の時の写真であったり、笑顔というよりも活動の様子を写したりしたものになる。面接ならば、笑顔や身ぶりなど、ノンバーバル(非言語情報)も含め全体で伝えられるが、エントリーシートでは文章でしか人となりをわかってもらえない。

 そこに「だが」「しかし」「かといって」「でも」などが羅列されていると、入社しても上司の指示を素直には受け入れられそうにないという印象になる。入ってすぐの何もわからない段階で「ですが」などと言われるのはご免こうむりたいと思われるだろう。企業は、まずは素直に指示を聞いて吸収してくれる人が欲しいというものだ。

 またこの逆接の接続詞の多用は、「困難なことを乗り越えた」とドラマチックに仕立てようとする作文技法にも起因していると考えられる。テーマは「学生時代、力を入れたこと」なのにもかかわらず、どうしてもそこに「困難をどう乗り越えたか」を入れたがる。

 確かに1000字くらいの文章を書くのならば、多少は山あり谷ありも必要だが、200~300字の中に山や谷を盛り込むのは無理。成果をアピールできる内容で勝負してほしい。

 もしも私がエントリーシートを選考するAIロボットだとしたらどうするか。「しかし」が使用されていたら無条件に減点したいくらいだ。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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