「エントリーシートに、大学入試の際、1浪して遠くの予備校まで通い、努力したことをアピールできますか」と大学3年生から質問を受けた。努力した経験は本人の糧になっているとは思うが、就活の自己アピールでは、残念ながら大学入試に向けた話はあまり好まれない。
それはあくまでも大学に入る前の体験だからである。自己ピーアールにせよ、学生時代に力を入れたことにせよ、企業側が期待しているのは大学生活でのエピソードだ。その大学でどう自分が成長できたのか、達成できたことは何か、学生生活の方を詳しく聞きたいのである。
高校時代までの経験は子ども時代のものという位置づけであり、親や先生の援助の下にあったことは否めないからだ。就職に際しては1人の大人として自分で判断し、行動した経験を語ってもらうことで、会社で活躍する姿をイメージしやすくしたい。
ところが先日、「ある大手企業のエントリーシートに中学・高校時代の部活動について書く欄があるのですが、入っていなかったらなんと書けばよいでしょうか」という質問を大学3年生から受けた。エントリーシートになぜ中・高時代のことを聞く設問を設けるのか、はなはだ疑問である。
小学校・中学校というのは地元の公立学校に通うケースが多く、結果的に校名も特定できる内容で記入してしまうと「門地・本籍・出生地」を明らかにすることと同等になりかねない。
採用活動でそれらを問うことは社会的差別につながる可能性があり、職業安定法に定められた「収集してはならない個人情報」の一つである。宗教や親の職業などを聞いてはならないのと同様だ。履歴書の「学歴」欄にも中学までを書く必要はなく、高校の学歴から書くのはそのためである。
とはいえ、エントリーシートで「中高での部活経験」を問われていた場合、その会社を受けたいのならば、中学までの校名などが特定されないようにして何か書いた方がよいだろう。エントリーシートにも履歴書にも、空欄があるのは好ましくない。白いところが多いと、不注意や熱意が足りないと思われる可能性があるからだ。
部活動をしていなかったのならば、代わりに書けるものを吟味しよう。例えば、正式な部活動にはなっていなくても「学園祭にクラス単位で臨んだ話題」や「体育祭の応援団の活動」でもよいだろう。仲間とチームワークをとった活動を思い出そう。
就職活動で、小さい時のことを聞かれるケースが散見されるようになった気がする。自己分析をする際、小さいころの記憶を掘り起こすかもしれないが、それはあくまでも自己分析であり、人に開示するものではない。少なくとも企業側から求められるのは疑問である。
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/