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【就活のリアル転載】中小企業、離職率なぜ高い 最適の「相性」見極めよう 海老原嗣生(2022/7/12付 日本経済新聞 夕刊)(2022/07/19)


 就職ナビサイトなど発表の就職内定率が6月1日時点で7割前後というのは実態より高すぎだ。様々な理由があるが、そのひとつは優良企業が中心であることだ。ナビサイトに求人を出している企業は掲載料を支払っている。そうした余裕資金があるのは外資や伸び盛りのベンチャー、そして超大手などの優良企業が多い。

 これらの企業は大方6月までに採用活動のピークを迎える。だから、ナビサイトを通じてそこに応募する学生たちも「7割内定」などというアンケート結果になるのだ。

 ただ、それ以外の企業、とりわけ、ナビサイトを使わず採用活動を行うような中堅・中小企業の採用は、今からが採用本番となる。世の企業の大半が中堅・中小企業なのだから、大学生の多くも中堅・中小企業に就職して当然だ。何も臆することはない。

 ただ、世の中には規模の小さい企業への就職に不安を抱かせるデータも多い。

 厚生労働省が取りまとめている「就職後3年以内の離職率」などがその最たるものだ。昨年10月発表分を見ると、従業員5人未満の企業は56.3%、5~29人だと49.4%、30~99人では39.1%と高く、100~499人が31.8%、500~999人は28.9%、1000人以上では24.7%と見事に規模が大きいほど率は下がる。こんなデータを見れば、就活生もその親御さんも「ひとまず大手に」と言いたくなるだろう。

 なぜ、規模の小さい企業の離職率は高いのか。「待遇や環境が悪いから」と短絡的に考えないでほしい。確かに大手と比べればそれは事実ではあるだろう。ただ、大量に離職した若者は大手に転職することは少ない。なのに、20代のうちに数度転職をすると、規模も地域もあまり変わらぬ企業で落ち着くことになる。当然、待遇も環境も大きく改善するわけではないだろう。なのになぜ定着するのか。ここを考えてほしいのだ。

 一つには、仕事や待遇の相場を知り、高望みをあきらめることにあるかもしれない。しかしもっと大きいのは、企業との「相性」なのだと思う。

 大手の場合、何万もの応募者を学歴などでスクリーニングし、その後は3~4回の面接で徹底的に「自社でやっていけるか」、すなわち仕事と社風との相性を見る。そのうえで、入社後に問題があった場合でも、上司のチェンジ、働く地域や配属先の部署変更など、何重にも相性の調整ができる。だから辞めないですむのだ。

 中小の場合、事業所や部課も少ないし、単一事業の場合も多いから、相性の調整ができない。そのうえ、応募者が少ないので、「合っていない」学生でも目をつむって採用してしまう。こうした「相性のすり合わせ」が不完全なため、辞める人が多い。数度の転職で自らそれを調整するしかないのだろう。

(雇用ジャーナリスト)


     

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