知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】インターン応募の注意点 話が深まる話題選びを 上田晶美(2022/7/19付 日本経済新聞 夕刊)(2022/07/26)


 「困難なことを乗り越えた体験として、小学生の時、いじめによる登校拒否から立ち直ったことはエントリーシートに書けますか」という相談をインターンシップに応募する学生から受けた。

 乗り越えて大学生にまでなっていることは立派だと思うが、就職の事実上の第一関門でもあるインターンシップの選考の際に言うのはどうだろうか。

 幼いころの話は、採用担当者の心にはあまり響かないと思われ、自ら明らかにするのはふさわしくない。特にこういうナーバスな問題は、それについて質問することを会社側は控えるだろうから、話はそこで止まってしまう。エントリーシートに書く話題は、そこから掘り下げて質問してもらい、話が深まりそうな内容にしてほしい。

 しかも登校拒否を乗り越えたと言うと、企業側に「入社しても、また同じような状況になるのでは」という疑念を抱かせる可能性がある。面接では短い時間で相手の人となりを判断しなくてはならないので、「いじめ」や「登校拒否」という言葉が印象に残ってしまうかもしれない。

 困難に直面したことを聞かれて、このほかにも病気のことや、けがのことなどを書く人は結構いる。いくら治っていたとしても、それを乗り越えた努力よりも、その既往症の方が印象に残ってしまっては困る。正直にすべてを書けばよいというものではない。まずは意欲的に働けそうな印象を与える話題を選ぶのが基本である。隠すのではなく、話題を選ぶだけだ。

 新型コロナウイルス禍によって、大学時代の経験として書けるエピソードは残念ながら乏しくなりがちだ。

 特に短期大学生や専門学校生は、学生生活のすべてがコロナ禍と重なってしまった人もいる。そうであれば、高校時代の部活動や生徒会の経験に触れるのはよいと思う。とはいえ、小中学校まで遡るのはあまり意味がないと思われる。

 学生側が自発的に書くのはまだしも、会社側から小さいころのことを聞くのは控えてほしいと思う。それは人権問題に触れる可能性があるからである。

 日本の格差社会の現状では、子どもの貧困率は7人に1人とも、6人に1人ともいわれる。貧困であっても、社会からの援助を受けて成長できた人もいるわけで、そこを無神経に質問しないでほしいということだ。

 私は月に1回、地元のこども食堂のボランティアをしているが、鉛筆1本が買えない家庭もあることを目の当たりにしている。

 格差の連鎖を断つためにも、小さいころの経験ではなく、学んだことを今後その会社でどう生かしていきたいのかに焦点を当てる面接で採用活動を進めてほしい。過去よりも現在、未来を大切にする社会をつくっていきたい。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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