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【就活のリアル転載】離職率低下させるには 中小企業は「相性」決め手に 海老原嗣生(2022/7/26付 日本経済新聞 夕刊)(2022/08/02)


 中小企業の高い離職率の理由は、社風や会社の方針と「合っていない」学生を採用してしまい、その後、社内でも上司や配属地域、担当する商品などを変更して調整する余裕がないためではないか、と考えている。そこで、学生にも経営者にもぜひ、お伝えしたいことがある。

 採用の決め手を相性にしてほしいのだ。その際に使える指標として「会社に定着するための5つの軸」をお薦めしたい。約20年前にリクルートが第二新卒者の調査から導き出したもので、以下のようなものになる。

 (1)周囲との関係については「競争型か協調型か」(2)発想の方向性は「斬新か伝統重視か」(3)意思決定要因は「情か理か」(4)「行動系、思考系」どちらのタイプか(5)スピード感は「粗いが速い、緻密だが遅い」かだ。

 たとえば(1)の周囲との関係であれば「競争して一番になれ」なのか、「いやいや仲良く、縁の下の力持ちで」なのか。企業内の環境が「競争」であった場合に、いくら優秀でそつのない学生でも「協調」重視の学生だと、なじめず辞めてしまう。

 (2)~(5)の軸も同様に考えてほしい。学生も企業も「給与」や「偏差値」などのスペックではなく、この5つの軸が合っているかどうか、面接で調べあってほしいのだ。これで相当、「こんなはずじゃなかった」という離職は防げるだろう。

 そのために新たな面接の方法を提案したい。通常の面接は行動観察型と呼ばれ、応募者が過去に経験した出来事を細かく分析しながら、人物像を把握していくというものだ。この方法には以下のような問題がある。

 (1)事前に面接の準備をしていなかった学生だと話すことがない(2)準備のし過ぎで脚色が多い学生もよく現れる(3)採用側が見たい学生の側面が面接時になかなか現れないといったものだ。

 そこで、新たな手法として状況設定型を提唱したい。これは、企業が聞きたい要素を含むような状況設定をして、それを二択の選択肢で応募者に選ばせるというものだ。

 たとえば「競争型か協調型か」を見極めたいのであれば、「あなたは本日、5対5の合コンの約束があります。ところがなんと、友人4人が病気や仕事で来ることができなくなりました。どうしますか」などと聞く。

 これで「(1)ライバルが減りラッキーと思う(2)抜け駆けは良くないから延期する」の二択から選ばせる。そして、競争型の(1)を選んだ学生には「相手はバイリンガルで異性の友人も多い活動家など。あなた一人で相手をできますか」といった感じで畳みかける。そこで臆するようなら「やや競争型寄り」と判断する。こんな感じで、聞きたい話をズバリ聞き、連続質問で裏をとっていくのだ。

 慣れると、企業も学生もけっこう楽しく、それでいて人間性の把握も進む。離職率を低下させるためにも、一度トライしてほしいところだ。

(雇用ジャーナリスト)


     

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