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【就活のリアル転載】就職を巡る虚実 中途採用、新卒より多く 海老原嗣生(2022/10/11付 日本経済新聞 夕刊)(2022/10/18)


 日本の就職(入職)では特有の問題がある。仕事も知らない未経験者を採用する、配属部署も不明確なのに入社する、中途での入職チャンスが多くない、転職が浸透していないといった問題など、日本型の「罪」の部分もままある。

 ただし、だ。こうした問題が増幅されて、エキセントリックに語られすぎるきらいがある。例えば日本では中途採用が新卒採用よりもはるかに多い。

 2020年の雇用動向調査で見ると、新卒の入職総数は中学・高校・大学・院・専修学校・高専・短大の総計で92万人(一般社員)だ。一方、社会人のそれは268万人(うち無期188万人)、長期失業者や復職者が31万人で、新卒以外の方が圧倒的に多い。

 中途採用が極端に少ないのは超大手の一部企業だけであり、大手でも多くは新卒比で2~3割程度の中途採用を行っている。規模が小さくなると新卒では応募が少ないため、中途採用が主流となっていくのだ。そしてある程度の規模を下回ると、就業経験のない既卒者も中途で正社員登用している。

 「日本型の悲劇」の象徴とされる、就職氷河期世代も卒業後、多くが正社員となっている。就業構造基本調査によると、例えばロスジェネといわれた00年の新卒者では、4人に1人である15万人弱が就職も進学もできず、進路未定か一時的就労となった。

 その後、1~5年で正社員になれた人は5万6千人、5~10年だと1万6千人、10年以上は1万2千人と合計で8万4千人にもなる。それでも6万人がまだ正社員になれていないようだが、専業主婦などになり、就職を希望しない人も多く含まれることもその一因だろう。こうした話が全く広まらない。だから、就活生やその親御さんは「卒業までに就職できないと一生正社員にはなれない」と必要以上に焦ってしまうのだ。

 超氷河期と呼ばれた1996~00年の新卒者。彼らが40代前半に収まる18年の労働力調査を見ると、彼らの年代の総雇用者696万人のうち209万人が非正規だ。すわ!一大事というなかれ。

 このうち男性は31万人、女性は178万人。女性のうち138万人が既婚だ。ちなみに、男性非正規31万人の多くが中卒・高卒などの非大卒だ。

 学歴別に同年に40代前半の非正規男性の人数を見てみると、大卒6万人、院修了1万人、短大・高専卒4万人に対し、高卒以下が19万人と多数になっている。非正規比率で見ても大卒は4.8%、高卒以下は11%と倍以上だ。

 熟年非正規問題は就職氷河期(卒業年時)の問題と受け止められがちだが、性別、学歴要因がことのほか大きい。日本では行政も識者も、一度、常識となってしまったことに弱い。彼らにより誤った常識が増幅され、世の人を無用に焦らせている。

(雇用ジャーナリスト)


     

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