2024年卒業予定の大学生の就職活動が本格化し、面接の機会が増える時期を迎えている。面接で聞かれる質問の一つに挙げられるのが「学生時代に力を入れたこと(ガクチカ)」だが、実際にどれくらいの企業が聞いているのか。改めてデータとともに見ていきたい。
リクルート就職みらい研究所が実施した「2023年卒採用活動に関する振り返り調査」で、採用活動におけるガクチカの聞き取りの有無や、評価ポイントを聞いた。
採用実施企業1491社の回答では、ガクチカを「聞いている」のは84.2%。従業員規模が大きい企業ほど聞く傾向があり、5000人以上の企業は91%が「聞いている」と答えた。
では、企業はガクチカのどんな点を評価しているのだろう。ガクチカを聞いている1255社のうち、「力を入れたことそのもの」は32.4%、「力を入れたことの成果」は31.3%と、全体の3割程度だった。
それに対して「力を入れたことの取り組み方」と答えた企業は80.9%、「力を入れたことから学んだこと」と答えた企業は78.5%と約8割を占めた。ガクチカを通じて企業が知りたいのは「どのような考えのもとで、どんな工夫をして取り組んだか」「何を学び、どう生かしているのか(生かしたいのか)」ということが分かるだろう。
ガクチカの一例としてアルバイトの経験を挙げてみよう。例えば「飲食店で新人向けの接客マニュアルを作成」し、「店舗の売り上げ前年比◎倍に貢献した」というケースを考えてみる。
より大切なのは、なぜやろうと思い、どんな試行錯誤を重ね、何を学んだかだ。そのため、面接担当者が聞きたいのは「自分も新人の時、困ったことがあった。対策をまとめれば後輩の不安も減るし、立ち上がりも早くなると考えた(取り組みの動機)」「周りの先輩にもヒアリングして多様な対策を集めた(取り組みの工夫)」「どんな情報があれば役立つか、相手の立場で物事を考える重要性を学んだ(取り組みからの学び)」といった話となる。
学生時代に力を入れたことを聞く中で、経験を自分なりの学びにつなげて「経験学習サイクル」を回せる人材かどうかを企業は見極めようとしている。企業が知りたいのは、ガクチカの成果そのものよりも、取り組み方から伝わる学生の考え方や、自分の強みを把握し、生かそうとする姿勢。それが入社後の仕事への向き合い方に表れるからだ。
大事なのはなぜそうしたか自問を重ね、実際に口に出すこと。友人や家族と対話する機会を作ると、うまく話せないところや、相手に伝わらないところも見えてくる。ガクチカで得た学びを仕事にどう生かしていきたいか。面接ではそんな視点まで含めて伝えられるようになるといいだろう。
(リクルート就職みらい研究所所長)