人と組織に関する研究機関のリクルートワークス研究所では毎年、民間企業における採用見通し調査を行っている。2025年に卒業予定の大学生・大学院生を対象にした新卒採用はどうなっていくのか、調査結果を具体的に見ていこう。
25年卒に対しても、企業の採用意欲は高いようだ。新卒採用数が前年より「増える」と回答した企業の割合は15.6%で、「減る」は4.8%だった。「増える」から「減る」を差し引いたポイントはプラス10.8。24年卒は同11.9だったので、前年から1.1ポイント減少した。「増える」との回答は24年卒の15.5%とほぼ同じだったが、「減る」が1.2ポイント増えた。
従業員規模別、業種別ともに、全ての区分で「増える」が「減る」を上回った。
従業員規模別では1000人未満の企業に比べて1000人以上の企業の方が「増える」から「減る」を差し引いたポイントが大きい。業種別では機械器具製造業がプラス15.5ポイント、情報通信業が同14.8ポイント、飲食店・宿泊業が14.4ポイント、小売業は14.2ポイントとなり、全体的に採用意欲の高い状況が読み取れる。
学生にとっては優位な状況となっており、歓迎すべきだといえるだろう。ただ、だからこそ、職場環境や仕事の内容を見極める上で、自分なりの価値観や優先順位を明確にし、企業を選ぶ際の軸を固めていくことが大切になる。内定を複数もらったとしても、何を基準に入社先を選ぶべきかわからなくなってしまうからだ。
リクルートマネジメントソリューションズでは、就活をした現在の大学4年生、大学院2年生に対し「2024年新卒採用 大学生の就職活動に関する調査」を実施した。そこで、自分自身をどこまで理解しているかについてアンケート調査をしたところ、自己理解ができていると思う学生は約6割にとどまることがわかった。
具体的には「自分がどのようなことに興味があるか、よくわかっている」という項目に対し、「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と回答した学生は59.7%。「自分がどのようなことが得意かよくわかっている」は59.1%、「自分のいいところも悪いところも理解できている」は61.2%という結果だった。
就活を経ても約4割の学生は自己理解が深まっていると思えておらず、就職先が決まったとしても、納得感のあるキャリア選定ができているかどうか疑問を感じさせる数値となっている。
採用意欲の高さから、企業からの情報発信はこれからも増えていくだろう。就活生は世の中にはどんな企業や仕事があるのか、一次情報を自分で調べて確認し、大切にしたいことや将来のキャリア観に合う環境かを比較しながら最適な就職先を見つけていってほしい。
(リクルート就職みらい研究所所長)