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【就活考転載】内定辞退を防ぐには キャリア展望の説明を 栗田貴祥(2025/11/10付 日本経済新聞 夕刊)(2025/11/18)


 内定式を終え、2026年大卒予定者は入社まで5カ月を切った。企業にとっては、ここからの内定辞退をいかに防ぐか。そして入社後の定着や早期の活躍にどうつなげていくかが新たな課題になっていくだろう。

 内定者との信頼関係を築く上で、1つの重要な要素となるのが「配属先の決定とその意図をどう説明していくか」という点だ。そこで今回は、内定者とどんなコミュニケーションを重ねていくべきかを考えていきたい。

 当センターの調査では、25年卒は3月の卒業時点で入社後の配属先が確定していたのは46.5%だった。配属先確定者に企業から配属意図の説明があったかどうかを聞いたところ、「組織・事業の観点」から「説明があった」との回答は62.5%、「説明はなかった」が37.5%だった。

 一方、「自身のキャリア・成長の観点」から「説明があった」は52.2%、「説明がなかった」は47.8%と、約半数が説明を受けていないことがわかった。さらに、企業が「自分のことを理解してくれていると感じる」かどうかを聞くと、配属意図の説明を受けた学生のほうが「理解してくれていると感じる」割合が高いことがわかった。

 組織・事業の観点から説明があった場合、「自分のことを理解してくれていると感じる」に当てはまると感じた学生は31.8%で、説明がなかったという学生との間に約2倍の開きがあった。自身のキャリア・成長の観点から説明があると差はさらに大きくなり、約3倍の開きが出ている。 

 つまり、組織の事情や事業戦略上の観点から配属の意図を説明するだけではなく、学生一人一人の強みや性格の特性、成長志向、将来のキャリアパスなどを理解した上で説明ができるかどうかが、企業に対する信頼感に大きく影響するということだ。

 たとえ配属先が学生の希望通りではなくても、「面接で〇〇がしたいと話していたよね。いずれはそのキャリアパスにつながるように、まずは△△の仕事で経験を積んでほしい」など、個々の思いへの理解を示していく。一人一人のことを考えて決めているという企業姿勢と、それを伝えるコミュニケーションが、入社後の仕事へのコミットメントにつながり、早期活躍の土台になっていくだろう。

 不確実性の高い時代を生きてきた学生たちは、「不確実な要素をできるだけ極小化したい」と考える傾向にある。配属先の仕事内容や働く環境についてしっかり伝えるとともに、配属の背景を、本人のキャリアにとってどんな意味があるのかまで丁寧に落とし込んで説明できるかどうか。その対話が学生に安心感をもたらし、組織への信頼を醸成していくことになる。

(インディードリクルートパートナーズリサーチセンター上席主任研究員)



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