知っておきたい就活情報

【就活考転載】条件だけで会社を選ぶな やりたい仕事考えよう 上田晶美(2026/1/26日本経済新聞 夕刊)(2026/02/03)


 「給料の高い会社に入りたいけれど、倍率が高いでしょうか」と、大学1年生の男子学生が質問してきた。働く以上、報酬は重要な要素である。とりわけ初任給は、かつてのような横並びではなく、昨年、今年と引き上げる企業が相次いでいる。そうした動向を踏まえれば、学生が関心を寄せるのはむしろニュースに敏感だともいえる。

 就職情報サービスのキャリタス(東京・文京)が全国の有力企業を対象に実施した調査(2025年7月発表)によると、採用活動で接点を持った学生について「待遇や働き方にこだわる学生が増えた」と思う企業は76.3%に上った。一方で「仕事内容への理解不足」「企業理解不足」の学生が増えたと感じるとの回答も4割強に達している。人事担当者の目には、学生が仕事の中身よりも条件面を優先する傾向が強まっていると映っているようだ。

 企業が初任給の引き上げを進める理由は、物価上昇への対応や少子化による人材獲得競争の激化がある。それだけでなく、学生側の条件優先の意識が強まっていることへの対応も、要因の一つなのかもしれない。

 冒頭の学生に対し「では、給料が高ければ、どんな会社でもよいのですか」と問い返すと、彼は少し考え込んだ後、「ブラックではなく、福利厚生がよい会社ですね」と答えた。彼の答えは多くの学生の本音を端的に表していると思った。

 では、こうした学生の条件優先志向はどこから生まれてくるのだろうか。少子化や将来不安などの時代背景はあるかもしれないが、それには大学教育も一因となっているのではないかと責任の一端を感じる。

 多くの大学で1、2年生の「キャリアデザイン」系の授業では、社会人基礎力、自己分析、将来の生き方・働き方、ワークライフバランスといったテーマが中心となる。業界研究にも触れるものの、主眼は「どう働くか」「どう生きるか」に置かれている。その結果、「どんな条件で働きたいか」を考える機会は早期に学ぶ一方で、「どんな仕事をするのか」「何を生業とするのか」を具体的に考える時間は十分とは言い難い。

 大学入学時点では、明確な職業目標を持つ学生ばかりではなく、何を学ぶかよりも「大学のブランドを優先した」「偏差値を基準に選んだ」という学生も少なくない。漠然と会社員になることを思い描いたまま大学生活を送り、就活に突入する学生が多いと感じる。

 大学でキャリアデザインを担当する立場として、働き方の設計にとどまらず、業界や仕事そのものへの理解を深め、「やりたい仕事とは何か」を考える機会を早期から提供していきたい。条件だけで志望業界を絞ることには無理がある。条件はあくまでも業界内での企業選別の一基準に過ぎないのだ。
 
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/



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