知っておきたい就活情報

【就活考転載】インターン廃止の動き 採用規制に一石投じる 曽和利光(2026/1/19付 日本経済新聞 夕刊)(2026/01/27)


 三菱地所は2027年大卒予定者の採用で夏冬のインターンシップをやめ、選考に関係なく参加できるイベントを毎月開くとした。一方で選考の過程では社員との交流やグループワークを組み込む。学生への「君がいま夢中になっていること。そのかけがえのない時間を、大切にできる就活であってほしい」というメッセージは過熱する就活の中、珍しく人間味のあるもので採用担当者の思いを感じる。

 インターンが悪いわけではない。インターンは相互理解を深めミスマッチの低減、志望動機の形成に効く。だが、そのために学業や課外活動を削ってまで長時間拘束する必然性がどこまであるのか、である。

 政府は企業の学生に対する取り組みを整理し、要件を満たすもののみをインターンシップとし、取得情報を選考に使えるとした。ただ、その要件は「汎用的能力活用型は5日以上・専門活用型は2週間以上」「実施期間のうち就業体験が半分超」などと重い。

 しかし、学生は時間が足りていないのが現実だ。インディードリクルートパートナーズリサーチセンターが27年卒を対象とした直近の調査では、インターンシップ等のキャリア形成支援プログラムが授業と重複するため、参加をあきらめた経験がある人が68.2%いた。学業やクラブ活動などにいそしんでいる人ほど、政府の定める正式なインターンシップには参加できないのだ。

 ここに善意のパラドックスがある。学生のためにと線引きをすればするほど、グレーゾーンのインターン「もどき」が生まれる。しかし、結局学生は「どれかが選考につながるかもしれない」と、念のために参加を増やすことになる。また、企業側も、知名度が低いほど学生との接点確保に必死で、様々な採用イベントの乱立を悪と断じるのも筋違いだ。結局、良かれと思って作ったルールによって、学生は負荷を強いられている。

 インターンを実施するのはよい。だが要件を満たさなければ「採用につなげてはいけない」というルールが不要なのだ。企業が実施するイベントはどれもほぼ採用目的なのだから、何でも採用につなげてよいとする方が噓がない。その方が短くても効率的なイベントが増え、学生の負荷は結果的に減る。

 学生が強い売り手市場で、こんなことが起こっているのは滑稽だ。本来、市場の競争に任せれば、学生のためにならない採用活動をしている企業は淘汰される。学業や課外活動に熱心な学生ほど、負荷のかかる採用イベントには参加しない。

 妙にルールで規制しようとするから、いらぬ問題が生じるのだ。一時的な市場の失敗はあるだろうが、心ある企業の採用担当者に任せておけば、学生のためになる就活は実現するのではないか。今回の三菱地所の「提案」にはそのような希望を感じた。

(人材研究所代表)


     

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