知っておきたい就活情報

【就活考転載】採用で最適な時期はいつ 手法練り、長期休暇を軸に 曽和利光(2026/3/9付 日本経済新聞 夕刊)(2026/03/17)


 3月となり、公には企業の採用活動の「広報解禁」となったが、周知の通り、実際は既に多くの企業が採用活動を始めている。就活の早期化は長い売り手市場の副産物だ。だが私は「どんどん早く動けば解決する」とばかりに、低学年へなだれ込む形で超早期化する可能性は高くないと見ている。企業にも学生にもメリットがないからだ。

 低学年の学生は意思決定力が足りない。専攻も関心領域も定まらず、社会経験も乏しい。企業が情報を投げかけても、受け手の器が育っていない。準備が追いつかない段階で前倒しすれば、学生は不安なまま保険として一応内定をもらうだけだ。

 また、内定は早く得るほど迷うもの。就活生は平均3社程度の内定をもらう。選択肢が多い以上、学生は比較検討を続ける。企業側は内定者フォローに苦労し、時に強く引き留めると「オワハラ」と受け取られかねない。内定が早いほど入社までの期間が長くなり、コミュニケーションコストは増える。人気企業が後から現れれば、内定者を奪われる可能性も高い。

 低学年はまだ学業などで成果に乏しく、採用評価の際の精度が上がらない。結局は学歴や印象といった曖昧で心理バイアスまみれの情報に左右されやすく、選考の質が損なわれる。

 歴史も同じ教訓を示している。就職協定が形骸化した時期、ある大企業が低学年も対象とした採用目的のインターンシップを打ち出したが、結果は大学も企業も疲弊し、沈静化した。これまで超早期採用をした企業はいくつかあるが、成功した企業を私は寡聞にして知らない。企業が「青田買い」で得たつもりの苗は、収穫期に他社が刈り取るだけなのだ。

 では、就活の時期を4年生に遅らせるのはどうか。4年生は卒業論文・研究の山場であり、学業に最も集中すべき時期である。就活がそこに食い込めば、大学教育の芯が折れる。しかも日系大手だけが遅らせても、外資やベンチャー企業は早期選考を続ける。学生が併願できなくなれば、早期化と長期化が同時に進む最悪の組み合わせになりかねない。

 だから現実的な落としどころは、3年生夏のインターンで企業と学生が相互理解を深め、冬休み、春休みに選考を進めることだ。実際、今はそうなってきている。企業もちゃんと考えていて、最も合理的な時期に落ち着き始めている。

 私はもちろん学業を阻害しない就活は重要だと考えているが、それは「時期」よりも「手法」で左右される。オンラインや動画でできる説明会や面接を、わざわざ対面を必須にしたり、仕上げるのに何時間もかかるのに選考の際はあまり当てにならないエントリーシートを提出させたりするから学業に支障が出る。手法が適切であれば、選考の時期は長期休暇を中心にすればそれほど問題ではないのだ。

(人材研究所代表)



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