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【社会に出る学生のための人権入門】(第51回)雇用の分野におけるSDGsの具体化を(2021/11/11)


 雇用分野をはじめとする障がい者差別撤廃を促進する法制度の改正は、企業に「障がい者差別撤廃」から「障がい者の自己実現」を支援する役割を求めるようなった。それだけではない。これからは国の政策動向からも外国人労働者が増加していくことは自明である。まさに雇用と人権が企業活動にとって益々重要な課題に浮上しているのである。

 また前回指摘したIT革命の影響は雇用の分野にも大きな影響を与えようとしている。AIを採用活動に取り入れようとする動きも急速に高まっている。しかし安易にAIを活用すれば差別を助長しかねない。

 一方でISO26000やSDGsが重視される人権時代において、雇用分野のリーガル(法的)リスク(危険性)マネジメント(管理)はますます重要になっている。今日のようなグローバル時代においては国内事業者であってもEUや米国をはじめとする諸外国の裁判所に訴えられる危険性も増しており、法令違反が巨大リスクになっている。国際的なビジネス活動を展開している企業においては言うまでもない。まさにインターネット時代の企業リスクは国際化、迅速化、巨大化、多様化、情報化しており、一つの不祥事が企業の存亡に関わる問題に発展することも少なくない。コンプライアンスの実現を法令自体が求める時代になってかなりの年月が過ぎた。CSR(企業の社会的責任)への要求もさらに高まっている。

 以上のような状況の中で、事前の予防(問題発見)的コンプライアンスとして、財務監査・業務監査のように人権デュー・ディリジェンス(人権監査)が強く求められるようになった。その重要な分野の一つが労働分野である。身近な事例でいえば企業内のパワーハラスメントも、人材活性化という経営的視点だけではなく、CSRの視点、人権・労働面のコンプライアンスの視点が重要であり、予防的な採用監査・労働監査が求められる時代になっている。

 また2020年6月1日には改正労働施策総合推進法が施行され、大企業に対してパワーハラスメントの防止義務も法定された。中小企業に対しても来年2022年に施行される予定である。こうした法律や上記で申し上げた多様な視点をふまえた具体的な人権教育や人権監査、人権救済システムの構築を推進していくことがSDGsの具体化であり、企業をはじめとする各種組織に求められていることである。とりわけ企業の皆さんにはSDGsはビジネスのルールでもあるという視点を持っていただきたいと願う。

北口 末広(近畿大学人権問題研究所 主任教授)



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