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【社会に出る学生のための人権入門】(第87回) チャットGPTがこれからの社会に与える影響⑲(2024/11/14)


 各種AIを全世界の人びととつなげているのはインターネットとスマホ、パソコン等である。インターネットとスマホがなければ今日のGoogleに代表されるプラットフォーム型企業の隆盛は考えられなかった。多くの人びとがネットにつながっていなければデジタル広告でGoogleやメタ(旧フェイスブック)が今日のような利益を上げることはできなかった。今からおおよそ四半世紀前の2000年にネットにつながっている人びとは約10%といわれていた。今日では60%を超える人びとがネットにつながっている。スマートフォンの登場が大きく貢献した。スマートフォンの便利さが享受できるのもインターネットにつながっているからだ。今やインターネットは電力網や水道のように極めて重要な社会的基盤になっている。その詳細な仕組みも知らないままスマートフォンの便利さを駆使して小学生から高齢者まで多くの情報に接している。そうした機器があってもネットにつながっていなければチャットGPTもその他の生成AIも活用できない。筆者のパソコンもネットにつながっているからこそマイクロソフトBing(Copilot)で多くの質問をプロンプトに書き込めば直ぐに回答文章をパソコン上の画面に表示してくれる。筆者のパソコンに生成AIが内蔵されているわけではない。質問はデータセンターまで送信されて、AIが回答を導き出すための推論を行ない瞬時に回答を生成し筆者のパソコンに送信してくれる。

 私たちが推論し考え判断しているのは私たちの頭脳である。その頭脳を稼働するために私たちは食事を通して栄養を取らなければならない。人間の脳の重さは全体重のおおよそ2%ぐらいであるが、そのエネルギー消費量は20%である。脳は多くのエネルギーを消費する。同様にAIも動力ではないが、ビッグデータを学習するときや質問の回答を導き出すための推論をしているときに多くの電力(エネルギー)を消費する。その電力量は膨大な量である。水資源も大量に使用する。地球温暖化の主要な原因物質である二酸化炭素の排出も増加する。AIは多くのビッグデータから学んでいるときよりも多くの回答を導き出すときの推論にそれ以上の電力を消費する。Googleはこの1,2年で一日最大約90億回の検索処理を行なっていることを明らかにしている。そのためにアイルランドの年間消費量に相当する電力を1年間で消費している。さらに2023年から2027年までに世界中でAI関連の電力消費量はオランダの年間電力消費量と同じ量だけ増加するといわれている。これらも重大な問題として浮上している。

北口 末広(近畿大学人権問題研究所 特任主任教授)


     

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