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【社会に出る学生のための人権入門】(第88回) チャットGPTがこれからの社会に与える影響⑳(2024/12/12)


 前回、生成AI(人工知能)が多くの電力等を消費するとこを紹介した。現在、その最先端の生成AIは「GPTー4o(フォーオー)」だ。一面的には人間の頭脳を超えていると指摘されている。インターネットとスマホに生成AIがプラスされればどのような情報環境になるだろうかと考えると恐ろしさすら感じる。

 すでに米国では有権者誘導等がAIによって行なわれている。AIがこれまでの科学技術と異なるのは人間の頭脳を代替する点だ。映画のターミネーターのようなAIを搭載したロボットは短期中期的には登場することはない。それでも頭脳を代替することは人間が行なう労働やビジネスに重大な影響を与える。人間の全ての活動にAIは関わっている。私的な日常生活をおくっているときも、ビジネスを展開し働いているときも、スポーツをしているときも全て頭脳は関与している。

 その人間の知能を代替するのがAIだ。それが他の機器と大きく異なる点である。そのAIを全世界の人びとと繋げているのがインターネットとスマホ等だ。インターネットとスマホがなければ今日のGoogleに代表されるプラットフォーム型企業の隆盛は考えられなかった。これらの企業はデジタル情報を駆使したビジネスモデルを構築し今日の規模に拡大した。スマホの便利さが享受できるのもインターネットにつながっているからだ。私たちが自宅に帰って日常生活を送れるのは電気や水道等があるからだ。それに匹敵する基盤が今やインターネットだ。その詳細な仕組みも知らないままスマホの便利さを駆使して小学生から高齢者まで多くの情報に接している。それらが社会の情報環境を劇変させている。

 情報環境が劇変したことによってネット上にはフェイクが蔓延することになった。これらが政治や経済、ビジネスだけでなく犯罪の在り方も大きく変えた。スマホを駆使した犯罪集団が多くの若者を始めとする人びとを遠方から操るような犯罪が多発している。その闇から実行犯をスマホで指示している首謀者を捕まえるのも困難を極めている。これらに生成AIが悪用される時代が間もなくやってくる。すでにやってきているかもしれない。詐欺罪は知能犯だ。その知能を代替するのがAIだ。筆者の予測していることを執筆すれば、その模倣犯が出てくることを危惧して最近ではあまり書かないようにしている。インターネットがなければサイバー攻撃は不可能である。しかしインターネットが存在しない社会は考えられないほど最重要の社会的基盤になっている。いずれ生成AIもそれ以上の社会的基盤になるだろう。そうした未来をふまえた上で悪用されないような社会的ルールを強固なものにしなければならないことは焦眉の課題である

北口 末広(近畿大学人権問題研究所 特任主任教授)



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