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【社会に出る学生のための人権入門】(第89回) チャットGPTがこれからの社会に与える影響㉑(2025/01/16)


 本連載で生成AIは膨大な電力を消費していることを紹介した。もしAIに使用されている半導体が「光半導体」に代われば電力消費量は数十分の一から数百分の一ぐらいに減少させることができる。東大や京大、NTT等が光半導体で進んだ研究をしており、いずれ実用化されるだろう。可能な限り早く実用化されることを願っている。

 生成AIは、台風や暴雨等の大きな被害をもたらす自然現象に対してより正確な予測を可能にしつつあり、地球環境問題の解決等に重要な役割を果たすことも期待されている。

 また進化している生成AIはマルチモーダル学習が可能になっている。マルチモーダル学習とは画像、音声、センサデータ等、様々な分野のデータを入力し統合的に深層学習する手法である。私たち人間も文章からだけで学んでいるわけではない。写真や動画、グラフ等のデータを統合して学んでいる。例えば医師も患者の病気を診断するときに問診や血液検査のデータだけで診断せず、多くの身体内部の画像や動画を駆使して診断している。こうした多様なデータを解析する能力で正確な診断が可能になっている。そうしたことが生成AIによってより早く正確にできるようになりつつある。それだけではない。政治やビジネス、労働、人権状況等、社会全般を大きく変えることは間違いない。

 現在のロシアのウクライナ攻撃によって始まった戦争は、当初の予想に反して長期的な戦争になっており、間もなく3年を迎える。現在のAIを搭載したドローンは、第二次世界大戦中の無謀な戦術である「神風特攻隊」のように生身の人間が操縦するのではなくAIが操縦している。多くの有為な若者の命を奪った戦術がAIによってなされているのである。自爆テロの一つとして自動車に爆弾を積んで攻撃対象のところ行って自爆するという攻撃がある。これもAIの運転による完全自動運転車ができれば簡単にできてしまう。つまり戦争も生身人間の兵士による戦争から人間が存在しない戦場になると筆者は考えている。より端的にいえばAI対AI、AIロボット対AIロボットになる可能性が極めて高い。現在、ロシアが核兵器の超大国であるによって西側の支援も慎重に行なわれているが、核兵器やそれを運ぶミサイルも大量の微小なAI兵器によって無力化される事態になるかもしれないと考えている。微小兵器なら迎撃ミサイルに打ち落とされることもない。究極の場面である戦争を事例に出したのは最も分かりやすいと考えたからである。

 こうした状況を社会のあらゆる場面にあてはめて考えればビジネスや労働、日常生活がどのような変化を受けるか想像がつくだろう。是非、読者に未来について想像し考えてほしい。それが今を考える上で重要なことでもある。

北口 末広(近畿大学人権問題研究所 特任主任教授)



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