
今年度上記研修会では、「障害者を対象とした職業訓練と雇用・定着」をテーマに、「大阪府が実施する障害者を対象とした職業訓練」と「ニューロ・ダイバーシティに着目した精神・発達障害者の採用・定着・活躍支援の最前線」という二本立てで研修会を開催しました。当日は多くの方に参加いただき、また、参加者から積極的な質問があがるなど大変好評でした。
【大阪府からの案内資料、株式会社Kaien様の講演資料は、当センターの「会員コーナー」からダウンロードいただけます。】
テーマ:「大阪府が実施する障害者を対象とした職業訓練」
ご案内者:夕陽丘高等職業技術専門校 訓練支援室長 渡辺幸治様
大阪障害者職業能力開発校 在職者支援担当課長補佐 高谷勝也様
はじめに、大阪府が実施している障害のある方を対象とした職業訓練など、行政の取組みについてご紹介がありました。この取組みは、職業能力開発促進法に基づき、障害のある方が就職に必要な技術・知識を習得して職業的に自立し、生活の安定と地位向上をはかることを目的として推進されているとのことで、職業能力開発行政の概要、高等職業技術専門校の特長・訓練概要にはじまり、この取り組みの大阪府と国の役割分担や訓練の民間委託など、様々な取組みが進められていることを詳しく解説いただきました。
次に、大阪障害者職業能力開発校にて実施されている「障害のある方を対象にした在職者訓練(テクノ講座)」に関してのご紹介をいただきました。この大阪障害者職業能力開発校は、職業能力開発促進法に基づき、国が設置し、大阪府が運営する施設とのことです。ここで実施されている「テクノ講座」とは、企業内で障害のある在職者が、表計算やCAD、プレゼンテーションなどの技能向上が図れるもので、経験豊かな講師による各種講座が開かれています。各企業でも障がいのある方が、さらなる活躍が可能となるよう、積極的に当該講座を活用してほしいとのご案内(慫慂)がございました。
https://www.pref.osaka.lg.jp/o110170/tc-shogaisha/hp/index.html
(センター啓発事業委員による要約)
テーマ:「ニューロ・ダイバーシティ(脳・神経の多様性)」に着目した精神・発達障害者の
採用・定着・活躍支援の最前線
講師:株式会社Kaien 法人ソリューション事業部 ディレクター 小林裕美様
概要:
「ニューロ・ダイバーシティ(Neurodiversity、神経多様性)とは、Neuro(脳・神経)とDiversity(多様性)という2つの言葉が組み合わされて生まれた、「脳や神経、それに由来する個人レベルでの様々な特性の違いを多様性と捉えて相互に尊重し、それらの違いを社会の中で活かしていこう」という考え方でアルトのご説明がありました。精神・発達障がいのある方については、何かが欠如しているというものではなく、これをひとつの特性として捉えて、社会の中で活かしていくことが重要になるとのことでした。
次に、障害者雇用の現状についての説明があり、今日、障害者の雇用者数が21年連続で過去最高を更新し、特に精神障害者の雇用数が顕著に伸びているとのことです。また、発達障害と精神障害に関する基礎知識についての解説もいただきました。
そして、発達障害・精神障害人材の採用・定着・活躍支援について、詳しい説明をいただきました。
企業で発達障害や精神障害のある方を雇用した場合、「①社内理解醸成、②採用・雇用計画の策定、③採用活動、④定着安定就労、⑤キャリア開発」という5つのフェーズごとに課題・悩みがあるとのことで、各フェーズ毎の特徴などについて、「障害者にお願いできる業務はない?」「選考の3つの見極めポイント」「メンタル不調にしないために」といった具体的なケースを交えてわかりやすく解説いただきました。
また、発達障害や精神障害のある方の雇用において直面する課題として多いものが、「社内理解の醸成」とのことで、これには、「まずは1つの成功事例を作る(オセロをひっくり返すように)」が大切であるとのことでした。
最後に、ニューロ・ダイバーシティを推進していくことは、企業において、マネジメント力、生産性向上、メンタルヘルスの課題改善など「組織力の底上げ」や「チームに起こるポジティブな変化」が期待でき、ぜひ積極的に取り組んでほしいとのことでした。
ニューロ・ダイバーシティという視点で、障害者雇用の捉え方をアップデートし、今後、発達障害者・精神障害者の採用・定着に向け、実践できるヒントが得られました。
(センター啓発事業委員による要約)