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【就活のリアル転載】離れた面接セット減る 圧迫感なくし共感重視 上田晶美(2018/5/15付 日本経済新聞 夕刊)(2018/05/22)


 「遠く離れた椅子で面接を受けるのかと思ったら、テーブルをはさんで普通に話をする感じでした」。今年は学生がそう報告してくるケースが増えている。

 面接といえばドアをノックして「どうぞ」と言われて入室し、面接用の椅子に座ると、奥の方で待ち構えている会社側の人事や役員から質問されるという図が思い浮かぶ。会社側との会話は2メートル以上離れてやり取りされるので、大きな声でないと聞き取れない。この距離が緊張感・圧迫感を生む原因の一つだと思うが、そんな離れた面接セットは少なくなってきているようだ。

 これには二つの理由が考えられる。一つ目は厚生労働省から学生に対する圧迫面接、不平等面接をやめるよう指導が出ているため。二つ目は売り手市場の影響で、会社が一方的に学生を吟味して選ぶのではなく、お互いが平等な立場で選び選ばれるものだという姿勢の表れではないだろうか。

 そもそも学生が緊張したまま面接に臨んでも、誰も得をしない。学生自身は実力が出し切れなくて残念だし、会社側には学生の真の姿が見えず、メリットはないだろう。以前は圧迫面接は「いやなことを言われた時の対処の方法を見ている」などとこじつけのように言われたが、それは単に落とすための手段だったのかもしれない。

 会社側が圧迫しようと意図していなくても、遠くに座っている年配者に大きな声で話すとなると、それだけで学生は緊張し圧迫感を覚える。会社側はよく学生に「自分の言葉で話してほしい」というが、そんな状態では自分の言葉どころか、考えてきたことの半分も言えなくなってしまうというものだ。

 私は採用コンサルタントとして、毎年数社に採用方法のアドバイスをしているが、面接のやり方は様変わりした。10年前までは「学生の本性を見抜く」ために「嘘を見破る」くらいのつもりで根掘り葉掘り質問していく面接が主流だった。

 ところが昨今の面接の主眼は「お互いが理解しあえる共感面接」であり、むしろ「学生の良さを引き出す面接」である。お互いがよく理解したうえで合意すれば次の面接に進み、内定にまで至るのがベストだ。その方が辞退者が少なく、「入ってみたらこんなはずではなかった」というミスマッチが少なくてすむ。

 面接セットが離れているのは会社側が講評などを書き込んだ文字を学生に見られないためという理由もあったかもしれない。それなら記入用ボードを使って斜めに持ち、手元を見えなくすればよい。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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