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【就活のリアル転載】「AIで仕事なくなる」論 詳細な実務の検討が必要 海老原嗣生(2018/8/14付 日本経済新聞 夕刊)(2018/08/21)


 最近、人工知能(AI)と仕事の未来に関する本を上梓したために、大学関係者から、AI時代を見据えてどのような職業教育をすべきか、とよく聞かれる。これから数回にわたってそのことを考えていきたいと思う。

 AIの進化・浸透で仕事がなくなっていく! そんな話が世に出たのは、2013年のことだ。オックスフォード大学のフレイ氏とオズボーン氏が書いた論文がその発端となっている。それから2年して日本でも彼らの手法を使い、AIで仕事がなくなるかどうか、という研究が野村総合研究所でなされた。

 前者では時期は不定だが世の中の仕事の9割はAIで機械化されるとされた。後者は「10~20年後」という時期指定までされて労働人口の49%分の仕事がなくなると書かれている。

 そこから「10年後になくなる仕事」とする特集がマスコミをにぎわすことになった。こうして、AIで仕事がなくなるという話が世に浸透していく。

 オックスフォードの論文から5年、野村総研の発表から3年たったが、仕事は全く減らず史上最強の人手不足に社会は直面している。金融緩和が長引きバブルの様相を呈していることや少子高齢化で人口が減っていること、などをその理由に挙げるのは見当違いだ。

 そうした労働需給の問題の前に、「なくなる」という仕事が「なくなっていない」という事実がある。15年程度で49%も減るなら、そろそろ1割くらい仕事は減ってもおかしくない。

 なぜこんなことが起きたのだろう?

 理由は簡単だ。これらの論文は、AI研究者に聞いた「機械で仕事が代替できるか否か」という話でしかない。技術的にできたとしても、価格が高ければだれもそれを導入しない。そこを見ないで、「可能かどうか」だけを取り上げている。

 そして、その調査もデータ分析を中心にしたものだ。だから彼らが想像しうる範囲での職務内容しかわからず、詳細な実務を検討したわけではない。しかも世の中にざっと2000以上もある仕事のうち、100の仕事を分類し、その傾向値を類推する形で代替可能な仕事を決めつけている。

 実際になくなるという仕事を実地調査すると、どこへ行っても「現実的には15年やそこらでは機械化・自動化は無理」という答えばかりだった。ああ、また働き手を脅かす労働ホラーに東奔西走するだけなのか、というのがAI関連の取材を始めたときの感想だった。

 ところがこの問題を深く調べていくと、そうそう安心してもいられないということが分かり始める。仕事はなくならないが、社会が大きく変わっていくのだ。

(雇用ジャーナリスト)


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