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【就活のリアル転載】うまくいかない「通年」「既卒」 結局、新卒一括採用に戻る 海老原嗣生(2017/7/3付 日本経済新聞 夕刊「就活のリアル」より転載)(2017/07/10)


新卒採用の動向をウオッチし続けていると、ジレンマを感じることが多々ある。もう何年も前に終わっただろうという話が、数年おきに何度も蒸し返されるからだ。

たとえば、採用ルール廃止で自由化をしよう、通年採用にしよう、新卒規定を緩くして既卒3年目くらいまでを対象としよう、など、本当に「またか」というような問題が、最近も新聞などのメディアをにぎわす。

これらの方策は私の知る限り、1990年代から実施され続け、そのたびに大失敗に終わっている。

たとえば本国では中途採用が主流となる外資系の大手企業さえも、日本では新卒採用に力を入れる。彼らも通年採用は行っていない。かつてこれで大失敗したからだ。既卒OKという施策も不発に終わり、結局、国内企業に輪をかけたような「早期採用」競争に血道を上げている状態だ。

まず、通年採用がなぜうまくいかないか、この話からしておこう。

大手人気企業が欲しがるようなプロフィルの学生は、だいたい選考解禁から1カ月程度で就職先が決まってしまう。要領は悪いが地力はあるような学生も、2カ月程度で大方は決定する。それ以降、窓口を開けておいても、なかなか選考にかなう学生は応募してこない。

一方、方々で不合格通知をもらった学生は藁(わら)をもつかむ気持ちで、通年採用している企業に応募する。そんな学生が大量に来るので、企業側は骨折り損となる。

既卒OKも同様だ。大手が欲しがるような学生は、たとえ氷河期であろうとも、第2・第3志望クラスの企業には決まる。

社会に出た彼らは、学生の時にはキラ星に見えた人気企業の裏側をよく知るようになり、「既卒OKですよ」といってももう応募はしない。そのため、選考にかなう既卒者はそれほど現れない。

こうして、選考対象を「後ろ」に引き延ばしても実利は少ないとわかった企業が、通年採用で目を向けるのは「前」だけとなる。結果、猛烈な早期採用が起きる。

かつて採用協定が不全だった2000年前後には、大学2年の終わりに採用が始まっていた。そんな超早期採用では、企業は内定から入社までの長きにわたる学生へのフォローに悩み、学生は学業を阻害され苦しむ。

だから、結局、元のさやに収まり、採用協定が結ばれ、一括採用に戻る。

これだけの話が数年おきに繰り返されている。まさに茶番といえるだろう。

(雇用ジャーナリスト)


     

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