採用時に受ける試験や適性検査は、どのくらい選考を左右するのか。
結論から単刀直入に書いておく。基礎能力、いわゆる算数と国語力のテストに関しては、けっこう企業は重視している。この点数が、基準に達しているか否かで1次選抜し、そこを通過した人は、面接で合否を決める、というケースが多いだろう。
一方、性格面を見る方の検査は、さほど重視しない。その理由は次回書く。こちらは、面接前に応募者の特性を知るための資料に使われたり、入社後の配属時に参考とされたりする。
さて、ではなぜ企業は算数と国語の力を重視するのか。
理由は2つある。
まず、この2つの力は、人生のそこそこ早い段階で確立される。算数なら10代後半、国語は20代中盤くらいまでが、著しく伸びる時期だ。ここを過ぎるとなかなか能力を伸ばせない。だから選考時点で見ておくのだ。
2つ目の理由としては、どの仕事をするにしても、算数と国語の力はかなり重要だからだ。
たとえば、先日こんなことがあった。
某大手企業の説明会で「他人の見ていないところで汗をかけ。必ず誰かがその努力を評価してくれる」と企業側が語った。その会社の社風に感動した応募者2人がぽつりとこうつぶやいた。
「そんなところまで見てくれるんだ」
「そんなところまで見られてるんだ」
同じように好評価を示した2人なのに、つぶやいた言葉の意味は全く反対になっている。まさに国語力の問題だ。後者の学生は当然落ちるだろう。それは面接官にとって「感じが悪い」からではない。こうした言葉使いをする人は、入社後も顧客や上司・同僚に対して似たような過ちを犯し、人間関係を崩すからだ。
算数も同様だろう。売り上げやそれを成すためにかけた労力を、数字で把握できない人間は、「たくさん」「とても」と曖昧な話に終始する。結果、効率的な業務運営もできず、他者に正確に物事を伝えることもできない。
こんな話を外資系企業の人事責任者に話したところ、激しく同意してこう語ってくれた。「そう、そこ。いくら英語が話せても、結局、国語力のない人間は、makeとtakeのささいな違いに気づけないんだよね」
ただし、国語力も算数力も、あくまでも基準点を超えるかどうかがポイントだ。その点数が著しく高くても特別待遇となるわけではない。
(雇用ジャーナリスト)