ここ数回にわたり、採用試験について書いてきた。
結論は、算数力と国語力以外は、現在は試験として重宝されているものはない、ということになる。
ただ、これだけ新卒採用が売り手市場であり、就活生の奪い合いが激しくなる中で、より効率的な採用方法はないのだろうか、という話をよく聞かれる。
欧米的な職務をしっかり定めたジョブ型雇用うんぬん、といった抜本改革の話になる前に、現在できる弥縫(びほう)策を以下、開陳しておきたい。
人気大手企業は今でも学歴を一つの採用基準としている。いや、せざるをえない、というのが正確なところだ。
数万人ものエントリー者がいるなかで、企業が説明会に呼べるのはせいぜい5000人程度だ。だから、そのセグメントに学歴を使わざるをえない、という「背に腹」的な事由だ。
その一方で、高学歴というのは、企業人として活躍できる特性を有する可能性が高い、ともいえる。
偏差値の高い大学には、「思考力が高い」か「継続学習力が高い」か「要領が良い」か、そのどれかがなければ入ることはできない。このいずれもが、企業人としても重要となるからだ。
こうした理由から、応募者が殺到するような人気大手企業は、学歴採用をやめはしないだろう。
ただ、学歴で選考を通らなかった就活生の中にも優秀な人たちは多々いる。
彼らに再チャレンジの機会を与える方法を「科学的」に設定してみてはどうか。
たとえば、算数・国語力の試験において、極めて高い点を取った学生を敗者復活させる。彼らにさらに性格検査を受けてもらい、高業績者の特性因子で選抜をして、それでも残った人を選考プロセスにのせる。
もしくは、大学名は関係なく、GPA(学業評価)の得点がとても高い人は、書類選考をパスして選考プロセスにのせる。
こうして、面接まで行けずに不合格となっている「数万人」のエントリー者から、超優秀層を受け入れてみてはどうか。彼、もしくは彼女は「思考力に富む」か、「継続学習力に富む」人たちであるのは明らかだ。
「入社試験や学業成績だけで合否を決めるのは納得がいかない」という批判は当たらない。なぜなら、彼らは敗者復活で選考プロセスにのせるだけであり、そのあとはしっかり面接で人柄を見て、合否判断をすればいいからだ。
(雇用ジャーナリスト)