結局、会社との相性が合わないと、若者は離職せざるを得なくなる。
ただ、大企業は選考過程で合わない人を落としていくため、入り口で自社とずいぶん肌合いのある人に絞っている。
しかも入社後に、異動や配転という形で、上司や仕事や顧客を変更し、相性を微調整することも可能だ。だから離職率が低い。
その逆に、中小企業は少ない応募者の中から採用せざるをえず、相性が合わない人も採らざるを得ない。しかも入社後に異動先も少ないから、相性の調整もできない。これが中小企業で離職率が高い本当の理由だと前回の私のコラムで書いた。
だとすると、中小企業はなかなか相性のいい学生が採れず、離職率が高くても仕方がないのか。いや、一つ、いい方法がある。「相性の5軸」というモノサシで学生をよく見るのだ。
これは、大手人材エージェントで転職活動をする、第二新卒クラスの若手社会人を対象に実施したアンケート調査から作り上げたものだ。
200問にも及ぶアンケートを6000人に実施し、そこから分析という手法で編み出したものだ。相性は以下の5軸で見るといい。
(1)周囲との関係 競争/協調(一番を目指せ、目立て/縁の下の力持ちでいい、スタンドプレーなどやめろ)
(2)発想の方向性 革新/伝統(昨日と同じものでは意味がない/奇をてらわず過去の伝統をしっかり守る)
(3)判断の基軸 理/情(情に流されず怜悧〈れいり〉に/計算ばかりでなく情を大切に)
(4)評価の基軸 行動/思考(能書きを垂れるのではなく動け/考えもせず動くのは意味がない)
(5)スピード感 スピード/緻密(粗くても速い/遅くとも正確)
入社3年以内に転職活動を始めた人たちのほとんどは、この5軸のどれかで、自分と会社が逆側にあった、とその調査からはわかった。
ならば、この5軸を選考の基本に置いて、自社と同じ側にいるかどうかを見ていけば、ミスマッチは減るだろう。
同じことは学生にも言いたい。企業を見るとき、業界や職務内容も大切だが、それは世に何百種類もあってわかりにくい。
一方、社風も同様にとても大切なファクトだが、それはたった5つの汎用的な軸でその多くがわかる。
ならば、この5軸を覚えて企業選びに使うことをお勧めする。一番簡単でしかもけっこう使える企業診断法となるだろう。
(雇用ジャーナリスト)