今でも企業は学歴で採用を決めているのか?
これは就活生にとって、最も興味があることの一つだろう。正直に言おう。人気企業といわれるところは、採用選考プロセスで、少なからず学歴を見ている。
その理由は以下の通りだ。
まず、何万人もの応募が来る。エントリーシートを全件読むのは相当難しいし、また、全員を面接に呼ぶことも物理的に不可能だ。そのため、人数を機械的に絞る必要がある。
その時に何を基準にするのが一番良いか?
たとえば、先着順にする、もしくは字がきれいな人にするなど、基準になりそうな色々な要素があるだろう。
そうした「機械的な絞り込み」をするうえでは、やはり学歴が都合がよいと思う企業が多い。その理由を書いておく。
ある程度の難関校に入るためには以下の3つの能力・特性が必要となる。
(1)勉強しなくても、テストで良い点が取れるほどの学習能力
(2)学習能力はほどほどだが、こつこつ地道に努力を続けられる継続力
(3)学習能力も継続力もほどほどだが、ツボを押さえてうまく立ち回る要領の良さ
難関校出身者は、少なくとも(1)~(3)のどれかを持っている可能性が高い。そして、この3つの力は、企業に入ってからも、仕事をするうえで、とても重要になる。だから、学歴はそこそこ、選抜基準として意義があるのだ。
ただし、一昔前のAOや一芸入試の黎明(れいめい)期に、学力と関係なく難関校に入った学生がかなりの数になった。
企業は学歴選抜で残った彼らを採用し、痛い目に遭ってきた。入社後に、まともに売り上げの計算ができなかったり、支社のある県名を伝えても、日本のどこにあるかわからなかったり、という体たらくだったのだ。
かといって、企業側は、採用選考時に、その学生がAO・一芸経由で入学したか否かを調べることは難しい。そこで編み出されたのが「高校名を聞く」という手法。各地の名門高校出身者なら、前記の(1)~(3)の力を持っている可能性が高いからだ。
その後、文部科学省の指導もあり、最近はAOや一芸入試などでも学力を問う大学が増えた。そのため、今では「高校名を聞く」企業は少なくなっている。結果、大学名選抜に戻ったといえよう。
ただ1980年代の大人向けマンガに出てきた、出身大学別の「派閥」のようなものは、現在の企業では少なくなっている。入社後の評価は、出身校ではなく実力がものをいうだろう。
(雇用ジャーナリスト)