「海外で暮らした経験があり、世界に貢献できる人になりたい」という志望動機を持つA子さんが相談にきた。
語学力も十分あり、かつて暮らした海外での経験を生かして社会貢献がしたいと熱弁をふるうA子さん。誰が見ても立派だと感じるだろう。
「ではどういう国のどんな人の役に立ちたいの?」と聞くと「まだそこまでは具体的には考えていない」という。
「世界で役に立つということは、発展途上国の役に立つということだと思うけれど、もし駐在するとしたらどこの地域で?」と詳しく聞いてみると、彼女の顔が曇った。
「日本国内に住み、NGOやNPO団体の職員になる」ことが目標なのだそうだ。あくまでも自分は豊かで安全で衛生的な暮らしに身を置きつつ、世界に貢献したいのだ。
自分の身を守りたいのは当然だし、それを責めるつもりはないが「世界に貢献する」という気持ちがどこまで本気なのかわからなくなってくる。
ここ数年「社会の役に立ちたい」という志望動機を持つ大学生が増えたと感じる。A子さんのように世界とはいかないまでも、就職を考えるとき自分の中心に置く「軸」や「核」として「人の役に立つ仕事」を挙げる大学生は多くなった。
夢や理想を高く掲げることは大事だし、そんな若者たちは社会にとって貴重な存在だ。自分本位ではなく、周囲の人の役に立ちたいという気概を持ち社会に出る人が増えれば、それこそ社会が変わるのではないか、と期待が持てる。そういう人を育てていきたいものだ。
問題は、次のステップとして具体的にブレークダウンして考えるところだ。
世界で役に立つというのは「どんな国、地域か」と焦点を絞っていく。世界でなくても国内でも同じで、人の役に立つというけれど、いったい誰の役に立ちたいのか。その「人」とは誰なのかをもっと掘り下げていってほしい。
それも具体的に「年齢」や「その人の状況」などを詳しく考えて、たとえば「子供を持つ30代の男女」などと設定してみるといい。マーケティングでいえば、ターゲット設定の部分にあたる。
次に「何で役に立つか」ということを考えてみよう。「便利な商品の普及」で役に立つという方法もあるだろうし「安くておいしい食事の提供」かもしれない。
就活のスタートのところは、ぼんやりと広く「人の役に立つ」でいいが、次の段階への掘り下げをして志望業界につなげていこう。
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/