「『人の役に立つ仕事がしたい』と学生が面接で言うのはかまわないけれど、では逆に『人の役に立たない仕事』ってなんですか? と聞きたくなりますね」
ある会社の人事担当者の言葉だ。
反社会的な仕事、コンプライアンスに反するような仕事はもってのほかだが、その他の世の中のほとんどの仕事は、対価を得ながらも何らかの形で誰かの役に立つよう機能している。
製造業、サービス業など、どれをとっても人の暮らしになくてはならないものを生み出して提供している。むしろ役に立たなければ淘汰され、市場から消えていくだろう。
「人の役に立つ」が自分の就活の軸であってもかまわない。前回の私のコラムでも書いたように、そこからブレークダウンして、具体的な志望業界に落とし込んでいけばいい。
学生は今の時期、志望企業に出すエントリーシートを書くことに追われている。3月末から4月の前半にかけて、各社の締め切りが目白押しなのだ。
エントリーシートの質問で多いのが「志望動機」。ここでまた台頭してくるのが「人の役に立ちたい」というワードだ。
「私の就職活動の軸は人の役に立つということです。中でも御社は」と書き出す人のなんと多いことか。
確かにそれが結論なのかもしれないが、そう切り出されると先の人事担当のように「では人の役に立たない仕事ってなんですか?」と切り返したくもなるというものだ。
企業の採用担当がほしいのは、漠然と人の役に立ちたいと言う人だろうか。それとも、自分の会社の売り上げに貢献できる人だろうか。もちろん後者だ。
「世界中の人に食を通じて貢献できればと思い、食品業界を志望しています」。もちろんそれは間違ってはいないだろうが、採用担当者にアピールできるかどうかを考えよう。
エントリーシートの限られた字数の中で、大義から書いても説得力に欠ける。それよりその会社で何をしたいか。会社の特徴を捉えて、自分の強みや経験をそこにどう生かしていくか。そうつなげていった方が、会社に貢献できそうな、ほしい人材として映る。
また、相変わらず、企業の本業以外の部分での社会貢献である「植林をしている」とか、「100円売れるごとに途上国に1円寄付をしている」というようなアピールに心ひかれる学生も多い。
だが、社会人からすると「では、自分のアルバイト代の中から寄付をしたことある?」と聞いてみたくなる。
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/