採用と学歴の話をこれまで書いてきた。この件に関してはどうも、日本だけがおかしいと誤解する声をいつもいただくので、今回は外国はどういう状況であるか書いておきたい。
結論からいえば、日本以上に厳しいのが欧米だ。
理由は簡単だ。欧米は基本的に、新卒採用がない。だから、若者は長期間、驚くほど安い賃金で職業訓練やインターンシップに参加して、ようやく職に就く。
日本のインターンシップのような、物見遊山なものでないことは、すでにこのコラムで記した通りだ。ただ、そんな中でも、新卒で悠々就職できる学生が少数いる。
まず、どの国でも求人倍率が高く、引く手あまたな理工系の学生。ただ、欧米の企業は学部学科だけでなく、専攻・研究室までぴったり合った学生を希望するケースが多い。
そのため、売り手市場の割には、学生たちが内定を得るまでに、時間がかかることも少なくない。
もう一群、新卒で就職ができる学生がいる。それが「学歴のよい」人たちだ。まずはアメリカについて書いておこう。
この国だと、ハーバードやエール、プリンストン、スタンフォードなどの名門大学の名前は、日本人にもなじみがあるだろう。
こうした大学には企業が列をなしてやってきて、キャンパスリクルーティングを繰り広げる。そんな有名大学がざっと10校はあるだろう。
なんだ、そんなにたくさん採用されるのか、と思わないでほしい。これらトップ校の学年定員は少なく、1500人もいかないところが多い。つまり10校合わせても、1万5000人にもならないのだ。
日本だと、早稲田大学と慶応義塾大学を合わせただけで、卒業生は1万5000人を楽に超える。
1学年の学生数が日本の約5倍近い約300万人ほどともいわれるアメリカで、その中の1万5000人がターゲット。いかに狭き門かがわかるだろう。
アメリカの場合、こうした名門大学の学費があまりにも高く、また国土が広いため、地元の州立大や市立大の優遇学費枠で勉学に励む優秀な学生が多々いる。企業はこうした学生を採るためにGPA(学業評価)による選考を行う。
GPAは4点満点だが、3.9点などのほぼ満点に近い学生たちは、こうした枠に入ることができる。
卒業までに単位を一つでも落としたら、あとはすべてが最高評価でも、もうこの枠には入れない。冗談ではなく、それくらいの難しさとなる。
(雇用ジャーナリスト)