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【就活のリアル転載】本当に売り手市場?大手の激烈競争変わらず 上田晶美(2018/4/17付 日本経済新聞 夕刊)(2018/04/24)


 「『売り手市場と言うのはもうやめてください』と言いたいくらいですね」。ある中堅大学のキャリアセンターの職員がこうぼやいていた。今年は昨年に続き、前年以上の「売り手市場」になりそうだという世評を受け、大学生の気のゆるみが甚だしいというのだ。大学主催の就職関連の対策講座や説明会に参加しないだけでなく、その後もあまり企業研究をせず、準備不足で面接を受けに行ってしまう現状があるという。企業に対して失礼過ぎて、大学の評判を落としそうで心配だという。

 実際、ある中小企業の人事担当が言っていた。1次面接で「弊社でやりたいのはどんな業務ですか?」と尋ねたら、「どんな仕事があるんですか?」と逆質問されてあきれたという。説明会ではないのだから、ある程度その会社の業務内容を調べていくのは常識というものだ。

 実は学生にとって、今年が決して「売り手市場」とは言えない数字も出ている。

 リクルートワークス研究所の発表した2018年3月卒業者の大卒求人倍率を、従業員規模別で見ると従業員300人未満の会社では6.45倍。学生1人に対して6.45人の求人があり、確かに売り手市場だと言える。ところが、従業員5000人以上の企業は0.39倍しかなく、前年の0.59倍から0.20ポイント低下しているのだ。

 つまり人気の大手企業に関しては決して売り手市場が続いているとは言えない。むしろ悪化しており、「買い手市場」と言えるかもしれないくらいの現状なのだ。大手企業の求人倍率はここ8年間それほど変化せず、一番良い時でも0.70倍で、1倍にはならず、激烈な競争が待っている。それなのに大学生は売り手市場は大手企業にも共通しているかのように安穏としており、そこが大きな落とし穴になっている。

 学生たちはまずは大手企業から受ける。有名企業にチャレンジしてみたい気持ちもわかるし、大手企業は採用数が多いので、受かりそうな気がするということもあるだろう。大学のキャリアセンターでも「夢をはじめからつぶすような指導はできない」という。だが、同時に中堅企業も視野に入れて受け始めないと、大企業に落ちたら中堅企業も終わっていて、いきなり中小企業になってしまうということもある。はじめから視野を広げておく必要がある。一つの目安は自分の大学からの入社実績を確認してみること。大手企業に入社実績がなければ残念ながら受かる可能性はかなり低い。

 売り手市場だからといって、戦略を間違え、適当な気持ちで準備もせずに面接に臨むと痛い目に遭うことになる。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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