欧州とりわけ大陸国では、採用時に学歴差別がない、などという神話が日本で語られることがあるが、それは大きな間違いだ。
確かに欧州の場合、大学の入学試験をなくしている国もある。そこからそんな誤解が生まれるのだが、社会はそんなに甘いものではない。
まず、欧州の場合、高校修了資格を得るための考査が非常に厳しい。しかもこれにランクがつけられる。そのランクを入試の代わりにする国が多い。そこで序列ができる。
こうしたランクでの選抜に加えて、フランスなどでは、人気が高い大学は、面接や筆記試験を普通に行ってもいる。
さらに言えば、フランスの場合、グランゼコールというエリート養成機関があり、本当に良い仕事に就こうと考えるなら、大学ではなくてこちらに行かねばならない。
そのためには、高校時代を成績上位で通し、グランゼコールに入るための予備級に進む必要がある。
ここでは一日の大半を勉強することが要求される。グランゼコール卒業生たちに聞くと、「人生で一番苦しかったのは予備級のころ」とほぼ皆が答えるくらいだ。
ただ、中央官僚やグローバル大手企業で上席を狙うなら、200校近くあるグランゼコールの中でも、文系理系各上位5校に入っていなければならないという。学歴社会極まれり、だろう。
しかも、だ。上位グランゼコールに入ればあとは安泰、というわけでもない。
昨今は、グランゼコールには、社会人スクールが併設されており、また、一般大学からの途中編入などもある。
有名企業ともなると、そうした社会人学生や編入者ではなく、「予備級からの進学者」が欲しくてたまらない。そこで、彼らをうまく見分けるための網を張っている。それが「学内派閥」だ。
学内には予備級からの進学者のみ入れる“党派”のようなものがあるのだ。だから、この党派に入っていれば、社会人学生や編入生ではないことの証明となる。
ただこの学内派閥がまた、彼らにとっては試練の場になる。派閥内は一糸乱れぬ鉄の結束を誇り、上級生には絶対服従なのだという。
取材で聞いた、上級生への服従ぶりはこんな具合だった。
公衆の面前で芸をさせられる。繁華街で異性を口説かされる。バカ騒ぎして怒られたときの身代わりにされる・・・・。
それは日本の一部体育会系サークルの過酷な例としてささやかれてきたような世界なのだ。
(雇用ジャーナリスト)