「一身上の都合により、次回の面接は辞退させていただきます」
ある日学生から企業の採用担当者にこういうメールが来たそうだ。社会人なら誰もが思わず吹き出してしまうのではないか。私が大学で学生に聞くと、何がおかしいのかよくわからないという反応である。
「一身上の都合」というのは、本来の使い方としては「退職理由」に書くものであり、他のシーンで目にすることはまずない決まり文句である。退職する理由だからのっぴきならない理由であり、重いものだ。自己都合退職の時、履歴書にそう書くと決まっている。退職理由には自己都合か会社都合の2つしかなく、そのうちの自己都合を言い表す際の言葉だと、社会人ならば説明不要と思うくらいの常識だ。
これを学生は、どんな場合にも「自分の都合で」と言う意味の丁寧な表現として使うものと勘違いしているのだろう。ところが、その採用担当者が言うには、こう書いてくる学生が1人ではないことにまた驚いたそうだ。個人の勘違いではないらしく、どうも何かネタ元があるようだ。おそらくネットの情報なのではないかと思われる。
今の就活はネットで多くのことが検索でき、便利にはなっている。会社の情報、過去の面接質問などもネットで検索すれば出てくる。利用した方が良いのは間違いない。
だが、それが信用できる情報なのかどうかを、まずは自分で確認することが必要ではないだろうか。「一身上の都合」を使うシーンが面接辞退にふさわしいかどうか、よく調べてみてほしい。
また、今年は「逆お祈りメール」というのがあるそうだ。そもそも「お祈りメール」というのは、面接の不合格を通知する企業から学生へのメールのこと。きちんとしたビジネスメールの形式にのっとって、「このたびは意向に添えず申し訳ありません。ますますのご活躍をお祈りしております」と結ばれている。学生が、その最後の言葉をとって「お祈りメール」や「3回祈られた」というように使うものだった。
それが今年は売り手市場だからか、逆に学生から企業への内定辞退メールが多くなっており、「逆お祈り」されるというのだ。最後が「貴社のますますのご繁栄をお祈りしております」と結ばれているのは、マナーが良いと褒めるべきか。この使用方法は間違っていない。
学生のみなさん、「一身上の都合」は退職するときに使う言葉であり、軽々しく面接辞退の折などに使用するものではありませんので、念のため。
(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/