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【就活のリアル転載】就活ルールの撤廃論議 「学生ファースト」視点欠く 上田晶美(2018/9/18付 日本経済新聞 夕刊)(2018/09/25)


 就活ルールの撤廃議論がマスコミ報道をにぎわせている。毎年のように「前倒し」など、解禁日をいつにするか、という話は出る。だが、今年は「就活ルール」そのものを全て撤廃しよう、自由競争にしようという思い切った意見が出てきた。

 もしもそうなった場合、就活が早期化・長期化することは避けられない。学生の就活への負担が大きくなり、決して学生を第一に考える「学生ファースト」でないことは明らかだ。

 極端な話、早期化に拍車がかかり、1年生から就活し、内定が出る事態にでもなれば、大学の存在意義が問われる。4年間はなんのためにあるのか、2年制の短大で十分だし、入学試験という検定試験さえあればいいということにならないか。

 また、就活自由化の議論の中で、一段と注目されるようになったのが「インターンシップ」である。3年生の夏にインターンシップに参加することが就活のスタートになってきているが、そのインターンシップの実態をご存じだろうか。

 先日、ある大学3年生が「この夏、ワンデーインターンシップに6社行きましたが、どれもイベント的で、これがインターンシップ?と首をかしげるものが多かった」と言っていた。

 私も前回のこのコラムで折り紙に取り組むグループワークを紹介し注意点を書いたが、インターンシップはかなりゲーム化している。中には「ボードゲーム」まであったそうだ。よくある「人生ゲーム」のようなものを仕事になぞらえたものだ。「その場ではワッと盛り上がるが、後から考えると、職業選択についての学びはなかったとむなしくなった」と言う。

 会社側にすれば、学生に人気のボードゲームで楽しんでもらい、人気を取り、就活生の母集団を形成して、次の選考に進んでもらいたいということだろう。グループワークでは前回書いたように取り組み姿勢やチームワーク力を見ることもできる。だが、本来のインターンシップの目的である学生の業界研究になっているだろうか。

 ワンデーでなく、5日間のインターンシップであっても、企業活動とは別メニューが組まれることが多い。ホテルで合宿したり、海外に行ったりと、だんだんバブルの頃のような「学生を接待する」様相を呈している。

 そんな中、その学生が1社だけためになったと思ったインターンシップがあったそうだ。それは中堅の会社で社長がじっくりと自分の創業の思いなどを語ってくれたものがかえって響いたという。インターンシップ一つとっても問題は山積で、就活ルールの撤廃にはまだまだ議論が必要だ。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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