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【就活のリアル転載】AIが生む「すき間労働社会」 付加価値の低い仕事が残る 海老原嗣生(2018/10/23付 日本経済新聞 夕刊)(2018/10/30)


 前回のこのコラムで、人工知能(AI)浸透後の働き方は、どの仕事でもいいから、「目的を持つこと」が重要だと書いた。

 ただ、じゃあ人はみな仕事の先に何かしらの目的を持たねばならないのか、というとそれも違うと思っている。仕事を重視する人はそれで何を実現したいのか、目的を持つべきだ。そうでない人は、仕事はそこそここなし、その他を楽しむべきだと思う。

 AIはそんな風に、人生を仕事から解放してくれる、自由の戦士ともいえるのだ。そのメカニズムを理解するために、「すきま労働社会」というものを説明しておこう。

 単純労働は、細かく見ると7~10の作業の集まりとなっている。たとえば寿司屋でいえば、握る、さばく(ネタを切る)というメイン業務のほか、冷蔵庫からネタを出す、氷水に漬ける、湯通しする、バーナーであぶる、たれを塗る、ネタを冷蔵庫にしまうなどの作業がある。

 このすべてを自動化するのは間尺に合わないから、完全自動化は無理だ。とすると企業はどのような経営判断をするか。

 それは、「1番付加価値の高い1~2個の作業だけをAIで自動化する」だ。寿司でいえば、握る、さばく、の2作業だろう。

 その部分は銀座の高級店の職人の技を分析して自動化し、あとは人手に任す。回転寿司チェーンがこの仕組みを取り入れれば、供される寿司は銀座の名店に近いものになる。結果、値上げも可能で、回転寿司には行かなかった通も顧客として取り込める。店は大繁盛するだろう。

 一方、氷水や湯に漬ける、たれを塗る、冷蔵庫から出し、しまう、などの付加価値の低い仕事は残る。結果、仕事は誰にでもできる簡単なものだけになり、労働には熟練が不要になる。機械がやらずに残った仕事だけをするので、私はこれを「すき間労働」と呼ぶ。

 こんな簡単な仕事ばかりだと、労働者は首を切られやすくなり、賃金も下がると思われるが、それは間違いだ。まず、10ある作業のうちの1~2を自動化しただけだから、仕事の総量はそう変わらない。少子高齢化が進む日本では、成り手不足が続くだろうから、容易に賃金は下げられない。むしろ、売り上げが増える分、給与アップを図り、人材確保に乗り出すだろう。

 とすると、働き手は、単純な仕事をやるだけで、今よりも給与は格段に良くなる。しかも、熟練のために親方に怒鳴られてまで修業する必要もない。つまり労働はホワイト化する。いいことだらけに見えるが、その裏で、熟練する楽しみ喜びはなくなる。働くって、人生ってナンダロウ。そんな状態になるのが「すき間労働社会」だ。

(雇用ジャーナリスト)


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