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【就活のリアル転載】AI化後の働き方 日本型苦役社会から転換 海老原嗣生(2018/11/6付 日本経済新聞 夕刊)(2018/11/13)


 このコラムでここ数回、今から15~20年スパンで見た人工知能(AI)による雇用の変化を書いてきた。それは、アンドロイドが人間の仕事を次々に奪い取るというディストピア(反理想郷)ではない。

 単純労働や営業、庶務、企画など今大量にある仕事は残る。なくなるのは一部の事務処理、士業などの知的業務、熟練の職人技などで、AI化されていく。結果、営業も企画もサービス業も製造業も、人はAIがやらない仕事を担当することになる。修業も苦役も不要となる。

 一方で企業は名職人の技をAI化することで製品・サービスの品質は上がり、売り上げは増える。そのころ少子高齢化は一層進み、生産年齢人口は2015年に比べ30年には約850万人減る。だからトータルで人手不足は解消されず、企業はもうかった分を人件費に回す。

 結果、人は楽に働き、今より高額な賃金を得るようになる。そのとき人はどうすべきか?

 これまでも書いてきたが、仕事そのものが目的でスキルアップや熟練を楽しむというのをやめる。仕事そのものはあくまでも手段であり、それを利用して社会で何を実現するか。自分は「何をやるか」を考えるというのがまず一つ目の解だ。

 そしてもう一つの解は「何も無理して努力することはない」だ。今のままじゃダメと学校に通って腕を磨いても、そうして身に付けた技術や資格自体がAI化されるのだから意味はない。そして、一つの会社や産業が衰えても、他の会社にいくらでも行ける。どの仕事でも熟練の必要な部分はAI化され、仕事は誰でもできるすき間労働となっているのだから。

 それでも会社全体のパフォーマンスは今より高まり、給与は上がる。なら、無理してスキルアップや上昇志向を持つ必要もないだろう。日本人は、「今のままじゃ食っていけない」という労働ホラーにかき立てられ、普通に人生を楽しむということを半ば悪と考える。そんな考え方をやめにしよう。

 AIが浸透した20年後は、夫婦ですき間労働をするだけで、それなりの収入になる。残業も休日出勤もないから子育てや介護に費やす時間も十分ある。あとは人生を楽しめばいい。仕事以外にやるべきことはいくらでもある。多くの欧州人はそういう生活観をすでに持っている。その代わり、彼らはほとんど出世せず一生ヒラだ。それでも生活に困らず、簡単に職も探せるなら、それでいいという生き方を認めるべきだろう。

 そう、いつもの労働ホラー観でAIを敵視するのはやめよう。日本型苦役社会から私たちを救ってくれる解放者ともなりうるのだと、私は考えている。

(雇用ジャーナリスト)


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