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【就活のリアル転載】「有意義」な面接を期待 学生と企業 本音出せる場に 上田晶美(2018/11/13付 日本経済新聞 夕刊)(2018/11/20)


 「今回のコラムでは、企業の採用担当の皆さんに役に立ちそうな話をします。

 4社に内定して金融関係の企業に入社することになったKくんが、その中から最終的に決めたのは、「面接が有意義だったA社」だという。面接の意義が決め手になったというのは、あまり聞いたことがない。「面接の会話で、はっとするような体験が毎回ありました。気づかなかった自分の長所や短所を再発見できた」そうだ。

 通常の面接では、学生は猫をかぶり、採用側は定型の質問をして、答えを少し深掘りする程度で、お互い腹の探り合いになることが少なくない。緊張感もあるし、それほど打ち解ける時間もない。そうしたなかで、A社の面接は自分を再発見できるような有意義なもので「この会社ならば成長できそう」とKくんは確信したというのだ。

 面接をそんな有意義な場にできたら、どんなにいいことだろうか。いくら売り手市場といえども、企業と学生では、学生の方が若く、圧倒的に経験不足で、弱い立場になる。学生にとって不利益な「圧迫面接」がないようにと、厚生労働省からの指導があり、パワハラめいたものは無くなったはずだが。

 それでは、そんな「発見があり、成長できそう」と思える面接とはいったいどんなものだったのか。

 その金融A社は徹底的に自分について質問したという。自分の人となりについて、小・中・高校時代から詳しく聞いてくれて、中学時代の部活動、友人のことまで関心をもって耳を傾けたそうだ。志望動機そのものは最終の役員面接まで聞かれなかった。

 中でも印象に残っているのは、「親友があなたのことをどう思っているか、長所と短所を両方教えてください」という質問だ。「長所は友人が多いこと。短所は計画性がないと言われる。だからできるだけ一人で抱え込まずに、早くから周囲の人に相談しながら物事を進めるようにしています」と答えたという。面接の帰り道、いつも友人に助けられてきたことを、しみじみと思い出したそうだ。

 学生が企業を選ぶ基準は会社の規模や給与ばかりではない。むしろ「人で選ぶ」という学生が増えてきている。そうなると、面接という学生との接点はかなり重要な場面になる。

 面接は企業が学生を試しているだけでなく、企業側も学生に試されている意識を持ちたい。学生に自分の言葉で語ってほしいなら、企業側も定型ではない質問を工夫しよう。お互いが本音で話し、成長を感じられるような「有意義な面接」を目指してほしい。

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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