知っておきたい就活情報

【就活のリアル転載】就活ままならぬ奨学生 新卒での挫折が返済影響 上田晶美(2019/1/15付 日本経済新聞 夕刊)(2019/01/22)


 ある女子大学の職員が「奨学金相談の窓口に来る4年生に内定先を聞くと、かなりの学生が『まだ決まっていません』と言うんですよ。就職しないで返済はどうするのか心配になります」と言っていた。奨学金を貸与されている学生にとっては、返済のことを考えると、なおさら就職先を決めることは大きな問題のはずだ。

 日本学生支援機構の発表によれば、2016年度は学生の2.7人に1人(37%)が奨学金を貸与されている。貸与は条件によって、無利子と有利子があるが、どちらも返済が必要なことには変わりない。奨学金を貸与されている学生の多くは、学業以外にも、アルバイトに多くの時間を割いていると考えられる。その分、就職活動がおろそかになっていないだろうか。

 今年の就活はインターンシップが鍵を握ってきたことをこれまでもこのコラムで指摘してきた。奨学金を貸与されている学生にはインターンシップに参加する時間をとることが難しかったかもしれない。インターンシップはアルバイトとは違い、無給になるからだ。

 アルバイトで一定の収入を得なくてはならない学生にとって、長期のインターンシップに参加することは困難に違いない。4割近い学生が奨学金貸与されている現状では、奨学生イコール「苦学生」というイメージで語られるものではない。インターンシップがここでも就活の格差を生む一つの要因になっているのなら問題である。

 もしも就職せずに今のアルバイトを続けて生活し、その上で奨学金を返済するとなると、なかなか厳しいやりくりになるであろう。特に日本型雇用の特徴である新卒重視の採用システムの中では、新卒時で一度つまずくと後々まで尾を引くことは大いに考えられる。

 アルバイトが忙しい→インターンシップに参加できない→就職できない→そのままフリーター生活に入るというような負のスパイラルに陥らなければいいのだが。

 学生時代に奨学金を貸与されていたある社会人の女性は、毎月約2万円を返済していたが、結婚する時、親から「全納してあげようか?」と言われたという。新生活に入るのに借金を持ったままというのは気が引けるだろうという親心か。結婚しても仕事を続けた彼女は親の申し出は断って、自力で無事完済したそうだ。

 奨学金の返済額も頭に入れ、人生設計の大切な一段階として就職活動を考えること。就職先が決まっていない4年生のみなさん、ここからなんとか巻き返してほしい。まだ正社員になれますよ!

(ハナマルキャリア総合研究所代表)http://hanamaru-souken.com/


     

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