今回は、外国人留学生と地域振興というものを考えてみたい。そのモデルケースとなるのが、大分県別府市にある立命館アジア太平洋大学(APU)だ。
ここには、約3000人の留学生が在籍する。学部生に限れば、つい最近まで日本一、留学生数の多い大学だった。開学20年に満たないこの大学が、別府市や周辺地域に及ぼした影響は大きい。
この周辺は、いわずと知れた日本有数の温泉地域であり、別府には数多くの源泉、そしてお隣の湯布院から熊本の黒川に至るまで、銘泉が立ち並ぶ。こうした環境の中に、3000人の留学生が存在すると地域はどう変わっていくだろうか。
最初に断っておくが、欧米式なハードプログラムでなるAPUは決して、「就労目的学生」を集めているわけではなく、アジアをはじめとした各国から上位学生を多々受け入れている。トップ層には手厚い奨学金を支給することもあり、母国の第一大学や日本の旧帝大にも入れるような学生が集まる。
ただし、彼らも日本に来ると、条件の良いアルバイト先はなかなか見つからない。塾や家庭教師やイベント関連などは日本語や風習の壁があり、また地域人口もそれほど多くないために、需要も少ないからだ。そこで必然、飲食や旅館、コンビニでアルバイトをすることになる。
結果、地元のサービス業は3000人もの「通訳兼バイト」を獲得することになり、しかも「広告塔」にまでなってくれる。留学生の親御さんなどが学校行事に合わせて来日し、子供の働く店やホテルを利用してくれるからだ。そこからリピーターがさらに友人を連れてくるという形で、母国の観光客をどんどん引き寄せてくれる。
こうして別府は、言葉の壁無く観光のできる街として、世界に有名になっていった。
ただ、こうしたブランド獲得のためにAPUが流した汗も忘れてはならない。各国別のいわば文化祭ともいえるインターナショナルウイークを開催し、そこで留学生たちが歌や踊りや劇を披露し地元日本人との距離を狭めた。
同じような努力としては、留学生出身国別ワールドカップなどもある。もちろん、学生食堂も地元住民にも開放し、ここにも各国料理が供される。学園祭でも同様だ。こうして地元民の理解を得られているから、アルバイト受け入れもスムーズにいったのだろう。
どうだろう、留学生を利用したこんな街おこしは。とみにアジア人気が高まった北海道や、世界的に有名な観光地である京都・奈良・広島・金沢・日光などでも同様な展開が望めそうだ。
(雇用ジャーナリスト)